城下町に施設を並べる内政が戻ってきた

コーエーテクモゲームスの『信長の野望・飛翔』が今冬に発売されます。シブサワ・コウ45周年の記念作で、公式サイトは「生きろ、『大義』のために。」をテーマに掲げています。

その公式サイトが真っ先に出しているのは、合戦ではなく内政でした。城下町に施設を配置して自分だけの町づくりを楽しめる、と書かれています。配置によって資源収入の効果が変わるとも説明されています。

東京ゲームショウ2026では試遊出展があり、4Gamerの試遊レポートが中身を伝えています。施設は土地の適性や、周囲にどんな施設が建っているかで効果が変わります。

同じ種類の施設をまとめると「特区」ができます。特区は施設の効果を高めるだけでなく、その隣に新しい施設を建てられるようにし、周囲の土地の適性そのものを変えます。

たとえば商業特区の近くに米問屋を置くと、周りが農業向きに変わります。そこへ水田を敷けば収穫量が増えます。商業施設は街道沿いで効果が上がるという条件もあります。

面白いのは、発展がそのまま得になるわけではない点です。商業が伸びて人口が増えると、食料の需要も増えます。不足すれば民忠が下がり、兵の強さにまで響きます。

4Gamerは、この方式を『信長の野望・烈風伝』や『信長の野望・天下創世』にあったものだと書いています。つまり約20年ぶりの復活です。では、その20年に何があったのでしょうか。

『天下創世』を最後に、町は自分で建てるものではなくなった

区画を割って施設を建てる内政を前面に出したのは、2003年の『信長の野望・天下創世』でした。農村や商人町といった区画を割り当てて城下を育てる方式で、内政も合戦もフル3Dになった作品です。

その後のシリーズは、2005年の『革新』、2009年の『天道』、2013年の『創造』と続きます。4Gamerが約20年ぶりと書いたとおり、区画に施設を建てる方式が前面に戻ることは、この間ありませんでした。

2016年の『創造 戦国立志伝』は「箱庭内政」という言葉を使っています。ただしこれはシリーズ初の武将プレイに合わせた仕組みで、家臣か城主か大名かで内政の規模が変わります。飛翔が言う約20年ぶりとは、起点が違います。

2017年の『大志』は、季節ごとの評定で得た施策力を使って方策を実行する形でした。内政の操作そのものは軽くなり、遊びの比重は合戦に寄っています。

2022年の『新生』はさらに踏み込みました。知行を与えた家臣が、郡という単位で自分から城下町や領地を育てていきます。プレイヤーは誰に何を任せるかを決める側に回りました。

この20年で、内政は「自分で建てるもの」から「人に任せて見届けるもの」へ移ってきたわけです。飛翔は、その流れを一度巻き戻したことになります。

45周年に選んだのは、新機軸ではなく手ざわりの作り直しだった

自動化へ進んだのには理由があります。大名は本来、堀を掘る場所を自分で決める立場ではありません。任せた家臣が育てていく『新生』の形は、大名らしさという一点では筋が通っていました。

一方で、任せた先で町が育つほど、プレイヤーの手元に残る作業は減ります。命令を出して結果を待つ時間が長くなれば、遊びの手ざわりは薄くなります。公式サイトが合戦より先に町づくりを置いている以上、飛翔が取り戻しにきたのはこの手ざわりです。

その手ざわりを求める声は、開発側にも届いていました。プロデューサーは6月のインタビューで、「もっと内政をやりたい」という要望の多さに触れています。『革新』以降は戦闘に比重を寄せてきたという認識も、自ら示しました。

45周年の記念作という位置づけも効いているはずです。節目の作品で新機軸を積み上げるより、シリーズが得意だった遊びを作り直すほうが、長く付き合ってきた人には届きます。

対応機種はPlayStation 5、Nintendo Switch 2、Nintendo Switch、Steamの4つです。価格は11,880円(税込)の予価とされています。前世代のSwitchを残したのは、遊ぶ人の幅を狭めない判断でしょう。

けん玉のひとこと

町づくりが戻ると聞いて最初に思ったのは、失敗できる余地も戻るのかということでした。任せて育つ内政はしくじりにくい代わりに、自分の判断で詰まる手痛さも起きないんですよね。

簡略化されていく内政に物足りなさを感じていたのは、自分も含めて少なくなかったと思います。飛翔の町づくりは新機軸として出てきたというより、その声が20年ぶん積み上がって形になったもの。反動としての復活なんですよね。

ただ、内政は塩梅がむずかしいところ。削りすぎると手ごたえがなくなり、作り込みすぎると数字の管理ばかりになります。どちらも遊ぶ気持ちを削ぐ方向で、そのあいだの幅はかなり狭いはずです。歴代が行ったり来たりしてきたのも分かる話です。

飛翔は、商業を伸ばしすぎると民忠が下がるところまで作ってあります。自分の欲張りが数字になって返ってくる作り。この重さが面倒に転ばない手前で止まっていれば、町を建て直したくなる2周目が待っているはずです。そこに着地してくれることを期待しています。

値段は11,880円と、気軽に試せる額ではありません。『新生』の任せる内政が薄く感じた人ほど、今回は手応えが戻ってくるはずです。逆にあの距離感が心地よかった人は、続報や映像を見てからでも遅くないところ。

戦国を舞台にした作品はいくらでもありますが、自分の手で城下を広げていく感触は信長の野望のものでした。今冬、45年目のシブサワ・コウさんが出す答えを、同じ画面で確かめたいですね。