前回は『IV』の8メガビットの工夫を、時田貴司さんの言葉からたどりました。今回はその翌年、1992年に出た『ファイナルファンタジーV』です。
【連載 第3回】ファイナルファンタジーV、覚えた技を持ち歩けるアビリティでIIIのジョブを育て直した

第1回で『III』のジョブチェンジに触れ、その考え方は『V』で別の形に育つと書きました。今回はその続きです。ジョブで覚えた技を、別のジョブに持ち出せるようにした仕組みを追います。
作品の概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 発売日 | 1992年12月6日 |
| 機種 | スーパーファミコン |
| 開発・発売 | スクウェア |
| ディレクター | 坂口博信 |
| シナリオ | 坂口博信、北瀬佳範 |
| バトル担当 | 伊藤裕之ほか |
| 音楽 | 植松伸夫 |
| イメージデザイン | 天野喜孝 |
ジョブを戻した理由は「アビリティ」だった
作り手の話の材料は、2023年にFINAL FANTASYの公式YouTubeチャンネルが公開した35周年の対談です。坂口博信さん、渋谷員子さん、北瀬佳範さんの3人が、『IV』から『VI』のころを振り返っています。
司会の松澤千晶さんが、なぜ『V』でジョブが戻ったのかを尋ねました。坂口さんの答えは、アビリティが大きかったというものです。チームで考えたアビリティが気に入っていて、それを前に出したかったといいます。
ジョブを使う案は、企画の最初から出ていたそうです。『V』からナンバリングの開発に加わった北瀬さんも、自分が入ったときにはもう決まっていたと話しています。
ジョブが増えれば、そのぶんドット絵も増えます。坂口さんは企画会議で、絵の担当は1日32パターン描くことになると冗談めかして言いました。会議室は静まり返り、みんな怒っていたそうです。
描いた側の渋谷さんは、少しずつ手を付けていったと振り返ります。踊り子は息抜きのつもりで楽しく描けた一方、竜騎士や鎧を着たジョブは本腰が要ったそうです。
覚えた技を、別のジョブへ持ち出す
ジョブは、旅が進むにつれて増えていきます。スーパーファミコン版では、最初の「すっぴん」を含めて22種類です。
戦闘では経験値とは別に、アビリティポイント(ABP)が入ります。これが貯まるとジョブのレベルが上がり、そのジョブ固有のアビリティを覚えます。
新しいのはここからです。覚えたアビリティは、別のジョブに就いたときも空いた枠にセットできます。ふつうのジョブは自由な枠が1つ。すっぴんは2つ、ものまね師は3つです。
『III』では、ジョブを替えるたびにキャパシティを払いました。技はそのジョブにいるあいだしか使えません。『V』はキャパシティをやめ、覚えた技をキャラクターの手元に残すようにしました。
遊びの上では、ジョブを替えても積み上げが消えなくなったことが大きい変化です。過去に育てたジョブが、次のジョブの持ち札になります。戦う前にどの技を組み合わせるかを考える時間が、そのまま楽しみになりました。
ファミ通.comの30周年の記事に、忍者の「にとうりゅう」と狩人の「みだれうち」を重ねた8回攻撃の例があります。
すっぴんとものまね師は、マスターしたジョブの能力補正や特性を引き継げます。ジョブを極めるほど、この2つが強くなる。育てる手間に、きちんと見返りがある作りでした。
伊藤裕之さんが持ち込んだ遊び心
対談では、バトルを担当した伊藤裕之さんの名前が何度も出てきます。『IV』の回で触れたATBの特許に、坂口さんと並んで名前のある人です。
逃げた回数で強さが変わる剣、ブレイブブレイドとチキンナイフも伊藤さんの案でした。坂口さんは最初、置かれたダンジョンに対して弱すぎると思ったそうです。遊ばれ方を見るうちに考えを改め、画期的だったと振り返っています。
ギルガメッシュも伊藤さんの発案です。坂口さんは自分は許可していないと笑い、物語を壊すと思って最初は怒ったと明かしました。それでも、あとになって面白いと認めています。
学校や会社で話題になった1本
『V』は国内で200万本を超えたとされます。ファミ通.comの30周年の記事は、当時の遊び手が学校や会社で攻略を教え合った様子に触れています。
ABPを多く落とす「せきぞう」を延々と狩った人が多かった、とも書かれています。同じ記事は、漫画『こちら葛飾区亀有公園前派出所』84巻にも触れています。両津勘吉が、隠しボスのオメガの倒し方を語る場面です。
レゾナンスが参考にした『V』
2026年10月22日に出た『ファイナルファンタジー レゾナンス』(Steam版は23日)の開発陣も、『V』の名前を挙げています。6月のGAME Watchの開発者インタビューで、バトルディレクターの白神剛志さんが語りました。
事前の準備を楽しむのが、往年のFFの良さだったと白神さんは話します。それを再現するため、特に『V』のジョブシステムなどを参考にしたそうです。
海外での受け止め方は海外レビューまとめに書きました。『V』とどうつながるのかは、連載の最後でじっくり見ていきます。
今遊ぶ方法
ドット絵のまま遊ぶなら、ピクセルリマスターの『V』です。Steamとスマートフォン向けは2021年11月11日に出ました。SwitchとPS4向けは2023年4月20日、Xbox Series X|S向けは2024年9月26日です。
Steamのストアページでの価格は、2026年10月23日時点で2,200円です。作品の紹介はピクセルリマスター『V』の公式ページにまとまっています。
ほかに1998年のPS版、2006年のゲームボーイアドバンス版もあります。ゲームボーイアドバンスへの移植では、ジョブが4つ増えました。この連載では、ドット絵の原作に近いピクセルリマスターを追います。
けん玉のひとこと
『IV』から入って、XIを除くナンバリングは遊んできました。『V』をたどって気づいたのは、アビリティが「作り手が気に入った部分を前に出す」ために生まれた仕組みだったことです。
坂口さんの答えは、拍子抜けするほど素直なもの。その素直さが34年後、レゾナンスの開発陣に参考として名前を挙げられるところまで届いた。戦う前に組み立てる楽しさは、色あせないんですよね。
ギルガメッシュの話も好きなところ。許可していない案に怒っても、あとで遊んでみて面白さは認める。その柔らかさが、『V』の持ち味だったはずです。
ピクセルリマスターで遊ぶなら、まず1つのジョブを極めて、その技を次のジョブに持ち出してみてください。次回は『VI』。ドット絵の到達点と呼ばれた1本で、お待ちしています。
※ 『V』の国内販売本数は一次情報を確認しきれていないため、誤りがあればお問い合わせからお知らせください。
関連商品広告
以下のリンクから商品を購入されると、当サイトに紹介料が支払われることがあります。価格や在庫は変わることがあるため、各ストアでご確認ください。




