前回はファミコンで出た3本をたどりました。今回はスーパーファミコンの『ファイナルファンタジーIV』です。スクウェアがスーパーファミコンで出した、最初のソフトでした。
【連載 第2回】ファイナルファンタジーIV、削ったセリフは仕草で見せた。時田貴司さんが語る8メガビットの工夫

遊んだ側の記憶は、最初のファイナルファンタジーが『IV』だったに書きました。今回は作り手の側から。ゲームデザインとシナリオを担当した時田貴司さんが語った言葉を追います。材料は2021年の30周年と2026年の35周年、2回のインタビューです。
作品の概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 発売日 | 1991年7月19日 |
| 機種 | スーパーファミコン |
| 開発・発売 | スクウェア |
| カセットの容量 | 8メガビット |
| ディレクター | 坂口博信 |
| ゲームデザイン・シナリオ | 時田貴司 |
| 音楽 | 植松伸夫 |
| キャラクターデザイン | 天野喜孝 |
同じ年の10月29日には、遊びやすく調整した『ファイナルファンタジーIV イージータイプ』も出ています。
ファミコンの『IV』は幻に終わった
時田さんによると、本作はもともとファミコン向けの企画でした。そのファミコン版の『IV』はボツになります。代わりに出たのは、『V』として作っていたスーパーファミコンの企画でした。
背景にはドラゴンクエストへの対抗心がありました。ナンバリングでも向こうが1歩先を行き、毎回悔しい思いをしていたといいます。
だからドラクエより早くスーパーファミコンで出して驚かせたい。その思いがチーム全体にあったと、時田さんは2021年のファミ通.comのインタビューで語っています。
新しいハードの機能を見せたい、という意識もありました。スクウェア・エニックス公式サイトの35周年インタビューで、時田さんと並んで話した北瀬佳範さんが振り返っています。
ディレクターの坂口博信さんは見本市で、モード7(拡大・縮小・回転)のデモを見て、その活用を強く推しました。飛空艇が飛び立つオープニングは、そこから生まれています。
書いたテキストの4分の1しか入らなかった
スーパーファミコンになって、できることは増えました。それでも容量が足りなかった、と時田さんは振り返ります。8メガビットに収めるため、かなり節約したそうです。いちばん苦しかったのがシナリオでした。
最初にシナリオのテキストを書き起こしたところ、それを1/4に削らないとカセットに入らないくらい容量が足りませんでした。(時田貴司さん、ファミ通.com 2021年10月)
物語の4分の3を捨てた、という意味ではありません。35周年のインタビューによると、坂口さんの筋書きを広げて書いた文章のうち、ゲームに入ったのが4分の1ほどでした。物語の骨格ではなく、書いた文章の量を絞った話です。
絵も同じでした。35周年のインタビューで時田さんが語ったところでは、容量を抑えるため、グラフィックの大半は8色で作られています。
16色が使えたのは、飛空艇と最終ダンジョン、最後のボスのゼロムスだけ。16色を使いたかったグラフィック担当者が、坂口さんに直接かけあって認めてもらいました。
言葉の代わりに、うつむかせた
セリフを削れば、心の動きを書く場所がなくなります。時田さんが選んだのは、キャラクターをうつむかせたり、背中を向けさせたりする「グラフィックの演技」で想像させるやり方でした。
結果として、プレイヤーが感情を想像して補ってくれた。それがかえって良かったのかもしれない、と時田さんは話しています。
節約を重ねた分、わずかな空きも生まれました。兜を脱いだカインの後ろ姿は、その空き容量にねじ込んだ絵です。セシルとローザが抱き合う場面のように、生々しい恋愛を描いたのもシリーズでは本作が初めてでした。
ドット絵だから描けた場面もあります。序盤、セシルはボムのゆびわで村を破壊してしまいます。2Dだからこそ、ああいう過激なことができたと時田さんは語っています。
5人の枠と、待ってくれない戦闘
パーティーは最大5人です。理由は、たくさん出せるなら出そう、という単純なものでした。それでもずっと5人のままでは味気ない。そこで人数やメンバーを入れ替えながら進み、最後に5人で戦う構成にしています。
仲間の顔ぶれが話の流れで変わっていく手ざわりは、コラムのほうに書いたとおりです。作り手の側から見ると、あの入れ替わりは「5人をどう見せるか」の工夫でもありました。
戦闘では、本作からアクティブタイムバトル(ATB)が入りました。時田さんはこれで、ボスの個性をより際立たせたと話しています。時間がたつと形を変えるボスや、時間とともに迫ってくるデモンズウォールがその例です。
物語の山場も、戦闘の中に置きました。リディアの再登場は、イベントシーンではなくバトルの中で起こります。戦いの最中だから臨場感が出た、と時田さんは話しています。エッジの覚醒も同じ造りです。
ATBの仕組みには、坂口さんと伊藤裕之さんを発明者とする特許があります。1995年に登録された米国特許の記録では、もとになった日本での出願が1991年7月16日。発売の3日前に、戦闘の仕組みを特許として出願していたことになります。
今遊ぶ方法
ドット絵のまま遊ぶなら、ピクセルリマスターの『IV』です。Steamとスマートフォン向けは2021年9月9日。SwitchとPS4向けは2023年4月20日、Xbox Series X|S向けは2024年9月26日に出ました。
Steamのストアページでの価格は、2026年10月15日時点で2,200円です。機種ごとの配信状況は、スクウェア・エニックスの『IV』のタイトルページにまとまっています。
ピクセルリマスターのドット絵は、渋谷員子さんが描き直しました。ハードの制約がなくなり、戦闘やフィールドの絵柄に統一感が出たと時田さんは話しています。
けん玉のひとこと
コラムでは、理屈ではなく感情で筋が通っているから、子どもでも飲み込めたと書きました。あの場面のいくつかは、セリフではなく仕草で運ばれていた。今回いちばん腑に落ちたのはそこです。
容量の壁を、削るだけで終わらせず、見せ方を変えて越えたところ。全部を書けなかったからこそ、うつむく仕草ひとつが重く残るんですよね。
ピクセルリマスターで遊ぶなら、カインの後ろ姿にも目を留めてほしいところ。空いた容量に、わざわざねじ込んだ絵です。
ファミコンの3本で毎回違う答えを出した姿勢は、新しいハードでも続いていたはずです。次回は『V』。『III』のジョブがどんな形で育ち直したのか、引き続き付き合ってもらえたら心強いです。
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