『ディビジョン』を作ってきたスウェーデンのスタジオが、Ubisoft の看板を3つまとめて背負うことになりました。
Ubisoft が『ディビジョン』の開発体制を Massive Entertainment に一本化した意味

9月30日、Ubisoft が社内組織の「Creative House 2」を一本化すると発表しました。名義は Massive Entertainment にそろえられます。
スタジオ名ではなく、ブランド名で束ねる
発表によると、対象はモントリオール、パリ、スウェーデン、トロントの開発チームです。これからは Massive Entertainment の名前で動きます。
扱うのは『ディビジョン』『ゴーストリコン』『スプリンターセル』の3シリーズです。加えて、新規 IP の『March of Giants』も同じ看板の下に入ります。
こちらは4対4の MOBA で、Ubisoft が外から取得したプロジェクトです。
Creative House 2 のゼネラルマネージャーは Christoph Hartmann 氏です。4拠点の創造力と技術を集める意義を、こう語っています。
次世代のフランチャイズを形づくり、新しいゲームと IP を生み出し、技術を前に進める機会になる
パブリッシングと流通は、これまでどおり Ubisoft が担当します。発表文には、プレイヤーやパートナーへの既存の約束に変更はない、とも明記されました。
変わるのは呼び名のほうです。これまで「どのスタジオが作ったか」で語られてきた作品が、これからは「どのブランドが作ったか」で語られることになります。
5つの「Creative House」が何を背負っているか
この統合は、単独の思いつきではありません。Ubisoft は2026年1月21日に新体制への移行を発表していました。スタジオ単位ではなく、ブランド単位で開発を束ねる「Creative House」制です。
内訳はこうなっています。Creative House 1 は Vantage Studios。『アサシン クリード』『ファークライ』『レインボーシックス』を担当します。
2 が今回の3シリーズ。3 は『フォーオナー』『ザ クルー』『ライダーズリパブリック』『Brawlhalla』『スカル アンド ボーンズ』です。
4 には『アノ』『Might & Magic』『レイマン』など、5 が『ジャストダンス』やモバイル作品群を受け持ちます。新体制が動き出したのは4月初旬でした。
同じ1月の発表資料(英語・PDF)では、6本のプロジェクト中止と7本の延期も明かされました。『プリンス・オブ・ペルシャ 時間の砂 リメイク』の中止はそのひとつです。
ハリファックスとストックホルムのスタジオは閉鎖されました。アブダビ、RedLynx、そして Massive でも再編が行われています。今回の名義統合は、1月に決まった枠組みに中身が入った段階です。
背景にあるのは数字です。Ubisoft の2025-26年度は、ネットブッキングが15億2510万ユーロで前年比17.4%減でした。
親会社に帰属する純損益は14億7520万ユーロの赤字です。従業員数は2026年3月末で16,590人、1年で約1,200人減っています。
一方で、Creative House 1 にあたる Vantage Studios には現金が入っています。Tencent からの11億6000万ユーロです。財務の立て直しと組織の作り替えが、同じ時期に並んで進んでいます。
『ディビジョン』を預かってきたスタジオの重さ
Massive Entertainment が生まれたのは1997年のスウェーデンです。いまはマルメとストックホルムに拠点を置いています。Ubisoft の傘下に入ったのは2008年です。
『Ground Control』『World in Conflict』で名を上げました。その後は『ファークライ3』や『アサシン クリード リベレーション』にも関わっています。
このスタジオの強みは、自前のエンジンを持っていることです。Snowdrop はもともと『ディビジョン』シリーズのために作られました。『マリオ+ラビッツ キングダムバトル』や『サウスパーク』でも使われています。
『アバター フロンティア・オブ・パンドラ』と『スター・ウォーズ アウトローズ』も、このエンジンで動いています。
つまり Ubisoft は、技術の土台を持っている側に名義を寄せた形です。4拠点の作品が同じブランドを名乗るなら、エンジンや制作の作法もそろえやすくなります。再編の狙いとしては筋が通っています。
現場も止まってはいません。『ディビジョン2』は10周年のシーズンが好調で、四半期のネットブッキングは前年の2倍を超えました。
Year 8 のロードマップには季節ごとの更新が並びます。ニューヨークを舞台にした追加内容と『The Division 2: Survivors』も控えています。
気になるのは残りの2つです。『ゴーストリコン』と『スプリンターセル』は、いまのところ新作の正式な発表がありません。看板は新しくなりましたが、そこに載せる作品はまだ見えていない状態です。
けん玉のひとこと
スタジオの名前が消える話は、たいてい寂しく聞こえます。ただ今回は、消えたのが Massive ではなく、Massive に寄せられた側だというのが面白いところ。
ブランドで束ねるやり方は、作り手の顔が見えにくくなる代わりに、技術と人を動かしやすくなります。1年で14億ユーロを超える赤字を出した会社が、まず手をつける場所としては分かるんですよね。
心配なのは、そろえた看板に中身が追いつくかどうかです。『ゴーストリコン』も『スプリンターセル』も、長く待たされているシリーズ。組織の形をどれだけ整えても、出てくるゲームが変わらなければ読者には何も届きません。
逆に言えば、『ディビジョン2』が10年目で伸びているのは、続けてきたからこその結果のはず。同じ粘りが残りの2シリーズにも向けられたとき、この統合ははじめて意味を持ちます。
新しい看板からどんな一報が届くのか、気長に待ちながら見ていきたいですね。
※ 『ゴーストリコン』『スプリンターセル』の開発状況は一次情報を確認しきれていないため、誤りがあればお問い合わせからお知らせください。




