『ベヨネッタ』『大神』の神谷英樹氏が、Scalebound についてあらためて語りました。9月4日公開の Video Games Chronicle のインタビューです。Xbox 側がやりたいなら実現させよう、という趣旨でした。ただ、この一言だけでは何も動きません。
Scalebound 復活は現実的か。神谷英樹氏の「Xbox が望むなら」発言と、中止作が戻る条件

発言は「条件付き」で出ている
神谷氏は自分から動くと言ったのではありません。Xbox 側が望むなら、という条件を先に置いています。Xbox の新しい経営トップに向けて Scalebound の映像を載せるよう頼んだ話も出てきます。意欲の強さは伝わります。ただし主語は一貫して相手側です。
同じインタビューで語られた現在の仕事は『大神』の続編でした。パブリッシャーはカプコンで、スタッフは70人を超え、音声を含む各職種が揃った段階だと説明されています。つまり神谷氏のクローバーズは今、別の大きな一本で手が埋まっています。
中止から9年、権利は動いていない
Scalebound は E3 2014 で Xbox One 独占として発表されました。開発はプラチナゲームズ、パブリッシングは Microsoft Studios です。開発は2013年から続いていましたが、2017年1月9日に Microsoft が中止を発表します。プラチナの佐藤謙一CEO(当時)は公式ブログで遺憾の意を表明しました。稲葉敦志氏は、出せなかったのは双方の失敗だと語っています。
問題はその後です。2020年、稲葉氏と神谷氏は再挑戦したいと発言しました。稲葉氏はこのとき、厳密にいえば IP は Microsoft のものだ、とも語ったと伝えられています。Microsoft は2017年5月に商標を更新したと報じられており、権利を手放した形跡は見当たりません。当時 Xbox のトップだったフィル・スペンサー氏は、復活を期待する声に否定的に答えていました。
さらに開発側の顔ぶれも変わりました。神谷氏は2023年10月にプラチナゲームズを退社し、同じ年に立ち上がったクローバーズへ移ります。かつて Scalebound を作っていた会社と、今「作りたい」と言っている人は、別の会社に分かれました。
中止作が世に出たとき、動いたのは何か
中止された企画が世に出た例はあります。『Duke Nukem Forever』は開発元の3D Realms が事実上解体しました。そのあと Gearbox Software がブランドごと引き取り、2011年に発売までこぎつけています。ただしこれは、権利を持つ側が変わったから完成した例です。作り手が同じチームのまま戻ってきたわけではありません。
反対の例が『Fable Legends』です。2016年3月に Microsoft が中止を決め、開発元のライオンヘッドも閉鎖されました。Fable というシリーズ自体は別のスタジオで新作が動いていますが、中止された企画そのものは一度も戻っていません。版元が権利を抱えたまま動かなければ、企画は眠り続けます。
Microsoft が権利を手放した例もあります。『Alan Wake』は2019年、パブリッシング権が開発元の Remedy へ返されました。それが2023年の『Alan Wake 2』につながっています。ただしこちらは発売済みの作品です。中止作でも同じ判断をするかは分かりませんが、Microsoft が権利を抱え続けるとは限らない例ではあります。
けん玉の見方
三つの前例を並べると、条件はかなりはっきりします。必要なのは熱意ではなく、権利がどこにあるかです。Scalebound の場合、Microsoft が動かない限り何も始まりません。そして Microsoft には、9年前に自ら止めた企画を再開する動機が今のところ見当たりません。
仮に権利の話がまとまったとしても、次に資金と体制が要ります。クローバーズは設立から3年に満たない会社で、70人規模を『大神』続編に投じている最中です。もう一本、当時の Scalebound と同じ規模の企画を並走させられる状態ではないでしょう。
それでも、この発言に意味がないとは思いません。中止から9年たっても作り手が名前を出し続けている企画は、そう多くないからです。復活の目があるとすれば、その一点しかありません。見込みは低いと思います。ただ、作りたい人がいなくなればその時点で終わりで、そこだけはまだ終わっていません。
※ Scalebound の商標の現状・2020年の稲葉氏の発言は一次情報を確認しきれていないため、誤りがあればお問い合わせからお知らせください。




