ファミコンにロムカセットを差して電源を入れると、すぐにタイトル画面が出ました。読み込みを待つという考え方が、そもそもありません。待ち時間を気にした記憶のない人も多いはずです。
ファミコンからPS5まで、ロード時間はどこまで消えたのか。40年分の読み出し速度で追う

その待ち時間が生まれ、長くなり、また消えていくまでに40年かかっています。記録媒体が変わるたびに、容量と読み出しの速さで綱引きが起きていたからです。
分かりやすい節目は2020年3月の「The Road to PS5」でした。ソニーのマーク・サーニー氏が、PS4で約15秒のファストトラベルを、PS5で約0.8秒に縮める実演を見せています。
据置機の記録媒体と読み出し速度
| ハード | 発売 | 記録媒体 | 読み出しの速さ |
|---|---|---|---|
| ファミリーコンピュータ | 1983年 | ロムカセット | 読み込み待ちなし |
| ファミリーコンピュータ ディスクシステム | 1986年 | 書き換え可能な磁気ディスク | 読み込み待ちあり |
| スーパーファミコン | 1990年 | ロムカセット | 読み込み待ちなし |
| セガサターン | 1994年 | CD-ROM | 2倍速・約300KB/s |
| PlayStation | 1994年 | CD-ROM | 2倍速・約300KB/s |
| NINTENDO64 | 1996年 | ロムカセット | 読み込み待ちなし |
| ドリームキャスト | 1998年 | GD-ROM(1GB) | 最大12倍速 |
| PlayStation 2 | 2000年 | DVD-ROM | 4倍速・約5.3MB/s |
| ニンテンドー ゲームキューブ | 2001年 | 8cm光ディスク(1.5GB) | 16〜25Mbps |
| PlayStation 3 | 2006年 | Blu-ray+内蔵HDD | BD 2倍速/HDD 5400rpm |
| PlayStation 4 | 2014年 | Blu-ray+内蔵HDD | 約50〜100MB/s |
| Nintendo Switch | 2017年 | ゲームカード+32GB | 公表なし |
| PlayStation 5 | 2020年 | 825GB SSD | 5.5GB/s(生) |
| Xbox Series X | 2020年 | NVMe SSD | 2.4GB/s(生)/圧縮時4.8GB/s |
| Nintendo Switch 2 | 2025年 | ゲームカード+256GB(UFS) | 公表なし |
縦に見ると、容量が増えた世代ほど読み出しの速さで前の世代に負けています。スーパーファミコンからPlayStationのCD-ROMへ、NINTENDO64からゲームキューブの光ディスクへ。速さを手放した乗り換えです。
ロムカセットには、待つ理由がなかった
ロムカセットの中身はROMで、本体の処理装置が直接読み出せます。ディスクのように円盤を回し、目的の場所まで針を動かす工程が挟まりません。
任天堂はこの性質を公にしています。NINTENDO64をロムカセットで出した1996年、CD-ROMは読み込みが遅いと述べました。ロムカセットが最速だという説明です。
ただ、任天堂自身がもっと早く、遅い媒体を家庭用機に持ち込んでいました。1986年のファミリーコンピュータ ディスクシステムです。書き換えのできる磁気ディスクで、店頭で500円払えば中身を入れ替えられました。
その代わり、読み書きには時間がかかりました。容量と値段のために待ち時間を受け入れる取引の始まりです。
パソコンではもっと長く待っていました。PC-8801版『ディグダグ』のカセットテープ版は、読み込みに約15分かかったと記録されています。
CD-ROMは、容量を買って待ち時間を払った
1994年の秋から冬にかけて、セガサターンとPlayStationが続けて出ました。どちらもCD-ROMドライブは2倍速で、読み出しは約300KB/sです。
この年の競争そのものはPlayStationとセガサターンが同時に出た1994年で書きました。
300KB/sは当時のロムカセットに比べて遅いものです。それでも採られたのは、容量が桁で違ったからでした。
映像を流し、歌を鳴らし、声をあてる。これを1枚のディスクに収められるようになったぶん、ディスクを読む時間が遊びの合間に挟まるようになりました。
1998年のドリームキャストは、セガとヤマハが作ったGD-ROMを採用しました。容量1GB、最大12倍速です。この機種で何が遊べるかはドリームキャストを今遊ぶ方法にまとめています。
2000年のPlayStation 2はDVD-ROMを4倍速で読み、約5.3MB/sに届きました。CD-ROMの17倍ほどで、速さは一度戻っています。
2001年のニンテンドー ゲームキューブは、8cmの独自ディスクで1.5GBを載せました。公式仕様の転送速度は16〜25Mbpsで、NINTENDO64のカセットの8MBと比べれば容量は約190倍です。
HDDが入って、ロードは「インストール」に姿を変えた
2006年のPlayStation 3で、待ち時間の置き場所が変わります。Blu-rayを2倍速で読むドライブに加えて、2.5インチ・5400rpmのHDDが標準で入りました。
PS2には内蔵HDDがありませんでした。標準で付いたことで、ディスクの中身をHDDへ写してから遊ぶ作品が出てきます。一部のディスクソフトでは、このインストールが必須になりました。
少しずつ払っていた待ち時間が、最初に一度まとめて払う形へ移ったわけです。短くなったのではなく、前にずらされました。
日本で2014年に出たPlayStation 4で、この形が前提になります。内蔵は2.5インチ・5400rpmのHDDでした。ディスクで買ってもインストールから始まる手順が、ここで当たり前になっています。
0.8秒の実演が、何を比べていたのか
2020年3月18日、PlayStationの公式チャンネルで「The Road to PS5」が公開されました。サーニー氏が、PS4のHDDとPS5のSSDの差を数字と実演で示した回です。
HDD側の説明はこうでした。データが理想的に並んでいれば100MB/sは出ます。ただし読み取りヘッドが場所を探す時間が入るため、実際には1GBあたり約20秒に落ちる、と。
PS5に積まれた825GBのSSDは、生の読み込み帯域が5.5GB/sです。2GBを0.27秒で読めると説明され、PS4と比べれば桁が2つ違う速さになります。
実演には『Marvel’s Spider-Man』が使われました。PS4で約15秒かかったファストトラベルが、PS5のプロトタイプでは約0.8秒で終わっています。
映像はThe Road to PS5(PlayStation公式YouTube)で今も見られます。倍率だけ見れば約19倍ですが、実演が伝えたのは倍率ではありません。待っていると意識する前に終わる、という線を越えたことです。
Xboxは「中断したところへ戻る」を売りにした
同じ2020年、マイクロソフトも読み出しの速さを前面に出しました。Xbox Series X|SのSSDは、生のI/Oが2.4GB/sです。Xbox Oneの40倍を超える値だと公式に説明しています。
この速さを生かしたのがクイックレジュームです。複数のタイトルを、中断したところから即座に再開できます。仕組みはXbox Velocity Architectureの解説(英語)に出ています。
ロードを速くするのではなく、ロードを跨ぐ方向です。待ち時間を削る競争は、ここで性質が変わりました。
待ち時間は、まだ全部なくなっていない
媒体が速くなっても、残る待ちはあります。分かりやすい例が『グランド・セフト・オート オンライン』でした。2021年、プレイヤーのt0st氏が、長い読み込みの正体はCPU側の処理にあると突き止めます。
ロックスターはこれを公式に認めて謝意を示し、修正を当てました。読み込み時間は最大70%短縮され、t0st氏には1万ドルが支払われています。SSDに替えても消えない待ちが、ソフト側に残っていたわけです。
シェーダーのコンパイル待ちも同じ種類の問題です。家庭用機は全員が同じハードなので、コンパイル済みのものを開発側が先に用意できます。PCではこれが効かず、マイクロソフトは2025年8月に対策を発表しました。
ロードの歴史を自分で確かめる
昔の待ち時間を持つ作品は、今も正規の形で触れられます。Nintendo Switch Onlineの追加パックなら、ファミコンやNINTENDO 64が遊べます。Switch 2ではゲームキューブも加わりました。
対応機種はNintendo Switch Online + 追加パックのページで確認できます。PlayStation側はPS Plusのプレミアムプランで、クラシックスカタログに昔の作品が並んでいます。
ただし、当時の待ち時間そのものは戻ってきません。本体のストレージから読み込むので、円盤を回していた頃より速く終わります。ディスクシステムの読み込み音を覚えている人には、少し物足りないかもしれません。
けん玉のひとこと
ロード画面を嫌っていた記憶は、正直あります。PlayStationのディスクを入れて、扉の向こうへ進むたびに止まります。あのころは、何かを待つのがゲームの一部だと思っていました。
それでも、待ち時間を全部否定する気にはならないんですよね。300KB/sの円盤を選んだから、声も歌も映像も入るようになったわけです。速さを手放した判断は、今から見ても間違っていなかったはず。
0.8秒の実演で感心したのは、数字よりも「どこを削るか」の見極めでした。ヘッドのシークという、プレイヤーが名前も知らない工程を名指しして潰します。そこまで追いかけたから、体感が変わったところ。
一方で、GTAオンラインの件はいまだに考えさせられます。ハードがどれだけ速くなっても、ソフトの中に1か所詰まりがあれば待たされます。しかも気づいたのはメーカーではなく、遊んでいた人でした。
待ち時間が短くなるほど、残った待ちは目立つようになります。だから次に削られるのは、起動直後の初期化やオンラインの接続待ちあたりだと見ています。ここまで来たなら、もう一歩やってほしいところ。
もし手元に昔のハードが残っているなら、一度電源を入れてみてください。40年で何が変わったのかは、表の数字より、あの待ち時間のほうが正確に伝えてくれるはずです。
※ 1990年代のディスクの読み出し速度は一次情報を確認しきれていないため、誤りがあればお問い合わせからお知らせください。
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