ゲームの開発費は、ふつう表に出ません。決算資料に載るのは会社全体の開発費で、作品ごとの内訳までは書かれないからです。
サイバーパンク2077の拡張1本に約94億円。ゲームの開発費はどこまで膨らんだか

その例外が、2023年10月5日に CD Projekt が出した投資家向けの開示でした。『サイバーパンク2077: 仮初めの自由』1本ぶんの金額が、そこに書かれています。
拡張ひとつで、製作費が約94億円
開示された製作費は約2億7,500万ズウォティ、マーケティング費は約9,500万ズウォティ。EU の市場濫用規則にもとづき、投資の判断に関わる重要な情報として公表されたものです。
開示日の2023年10月5日、1ズウォティは約34円でした。換算すると製作費が約94億円、マーケティング費が約32億円。合わせて約126億円がこの1本に乗っています。
効いてくるのは、これが本編ではなく、あとから出した拡張ひとつの数字だという点です。同じ開示では、発売から1週間の販売が300万本を超えたことも伝えられました。
裁判の資料から表に出た2億ドル
会社が自分から作品別の金額を出すのは、これでもまだ珍しいほうです。ほかの作品の開発費は、まったく別の経路で表に出ました。
2023年6月、米FTCとマイクロソフトの裁判に、ソニーが内部資料を提出しています。その黒塗りが不完全で、作品ごとの開発費が読める状態になっていたと報じられました。
『Horizon Forbidden West』は約2億1,200万ドルでした。『The Last of Us Part II』は約2億2,000万ドル。どちらもマーケティング費を含まない、開発費だけの数字とされます。
開発期間はホライゾンが2017年から2022年、ラスト・オブ・アスが2014年から2020年。ピーク時にフルタイムで関わった人数は、それぞれ300人超と200人と報じられています。
片方は会社が自ら出した数字、片方は手続きの途中で読めてしまった数字です。出どころの重みはまるで違いますが、並んだ桁はそろっていました。
日本のスタジオの数字も、外から出てきた
国内はどうか。スクウェア・エニックスの作品別の開発費も、会社ではなく大株主の資料から出てきました。
3Dインベストメント・パートナーズが2025年12月に公開した投資家向け資料です。推計では『ファイナルファンタジーVII リメイク』が209億円、『リバース』が185億円。『ファイナルファンタジーXVI』は91億円としています。
ただし推計であって、スクウェア・エニックスの公表値ではありません。経営の改善を迫る側が作った資料ですから、数字の取り方にも狙いが入ります。
それでも桁は、さきほどの2億ドル級とそろいます。200億円という規模が、日本の大作でも例外ではなくなったということです。
値札のほうは、そこまで上がっていない
開発費がこれだけ膨らんだ一方で、売値はどうなったか。2020年、北米の標準価格が59.99ドルから69.99ドルへ上がりました。15年ぶりの改定と報じられた変更で、倍率にすれば1.17倍です。
国内の税込価格も見てみます。『ファイナルファンタジーVII リバース』の通常版が9,878円、HD-2D版『ドラゴンクエストIII』が7,678円。11月発売の『グランド・セフト・オートVI』は9,800円です。
大作の値札は、どれも1万円の手前で止まっています。開発費の桁の動き方と比べると、ずいぶん静かな上がり方です。
値段の推移は、スーパーマリオブラザーズの4,900円から40年、ゲームソフトの値段はどう推移したかにまとめました。40年を並べても、値札は一本調子で上がってきたわけではありません。
けん玉のひとこと
拡張ひとつで94億円という数字を見たあとだと、9,800円の値札がむしろ控えめに見えてくるんですよね。
大作が高くなるのは、正直なところ分かる話です。回収しなければいけない金額が、昔とは桁から違うところ。値上げの報を聞くたびに身構えてしまいますが、作る側の事情としては筋が通っています。
それに、全部が高くなったわけでもありません。『Vampire Survivors』は499円、『Stardew Valley』は1,480円で遊べます。セールも当たり前になって、選べる幅はむしろ広がったはず。
気になるのは値段より、126億円を回収できる見込みの立つ作品しか通らなくなることのほうです。小さく試して様子を見る、という作り方が大作の現場から消えれば、遊ぶ側の選択肢も細っていきます。
だからこそ、自分から数字を出した CD Projekt の姿勢はありがたいものでした。高いか安いかを言い合う前に、そこに何が乗っているのかが分かります。
次に1万円近い値札の前で迷ったときは、その裏に何年ぶんの人手が積まれているのかも、頭の片隅に置いてみたいところです。
※ ソニー作品とスクウェア・エニックス作品の開発費は一次情報を確認しきれていないため、誤りがあればお問い合わせからお知らせください。




