国内のゲーム会社は、いつから海外で稼ぐ会社になったのか。決算資料をさかのぼると、その線がかなりはっきり引ける会社があります。カプコンです。
カプコンの海外比率は10年かからず3割から6割へ。国内メーカーの売上はどこまで海外に移ったか

以前のカプコンは、決算にあわせて出す資料に所在地別の売上高を載せていました。その表から2010年3月期の構成を出すと、国内70.7%・海外29.3%。2012年3月期も国内70.6%で、国内が7割という形が数年続いています。
国内7割から海外6割へ、動いたのは2年
そこから10年も経たないうちに、比率はきれいに裏返ります。
| 年度(3月期) | 国内 | 海外 |
|---|---|---|
| 2010年 | 70.7% | 29.3% |
| 2011年 | 68.6% | 31.4% |
| 2012年 | 70.6% | 29.4% |
| 2017年 | 64.0% | 36.0% |
| 2018年 | 55.3% | 44.7% |
| 2019年 | 39.4% | 60.6% |
数字はアミューズメント施設なども含む全事業の所在地別売上高から出したものです。2012年3月期までの資料には「日本にアジア地域を含む」という注記があります。年度によって区分がそろっているわけではありません。
それでも、動いたのが2018年3月期と2019年3月期の2年だったことは読み取れます。その真ん中に『モンスターハンター:ワールド』の発売日、2018年1月26日があります。
ワールドは2026年6月末までに2,960万本を積みました。『アイスボーン マスターエディション』を含む数字です。前年の2017年1月には『バイオハザード7 レジデント イービル』も出ていて、こちらも1,740万本。
国内で数十万本を重ねる作りから、世界で千万本を狙う作りへ。主力の設計が入れ替わった時期と、比率が逆転した時期がぴったり重なっています。
ワールドの本数の推移は、モンスターハンターの数字が跳ねたのはワールドから。カプコン公式IRで20年を追うにまとめました。
円建ての地域別は、途中で見えなくなった
ところが2020年3月期以降、この所在地別の表は決算説明資料から消えます。セグメントの区切りが事業の種類だけになり、「国内いくら・海外いくら」を円で追う手段がなくなりました。
代わりに載るようになったのが、販売本数ベースの地域構成比です。2026年3月期は日本10.0%(593万本)に対して海外90.0%(5,313万本)。2022年3月期の日本16.9%から、さらに下がりました。
ただし、これは金額ではありません。単価の違う作品が混ざるので、「海外9割」を売上の話として読むと実態より大きく見えます。
同じ資料にはダウンロード比率も出ています。コンシューマの販売本数に占める割合は、2018年3月期の45.1%から2026年3月期の83.7%へ。
店頭にパッケージを並べる商売から、世界のどこからでも同じ日に買える商売に変わりました。海外比率が上がった一因は、ここにありそうです。
数え方が変わると数字の意味も変わります。その話はカプコン・任天堂・ファミ通ゲーム白書で違う、ミリオンセラー100万本の数え方でも書きました。今回の「本数ベースの90%」も、同じ注意が要る数字です。
任天堂もスクウェア・エニックスも向きは同じ
カプコンだけの話ではありません。任天堂の2026年3月期は、売上高2兆3,130億円のうち海外が1兆7,781億円。海外売上高比率は76.9%で、こちらは円ベースで公表されています。
スクウェア・エニックスは円建ての地域別を出していませんが、ゲーム事業の地域別販売本数は公開しています。2026年3月期は日本22.7%(607万本)・海外77.3%(2,061万本)。前の期の74.8%からさらに上がりました。
円と本数で単位がそろわないので、3社を横一列に並べて順位を付けることはできません。それでも向いている方角は同じです。
カプコンが資料で引くNewzooの推計では、世界のゲームソフト市場は2,270億ドル、約36兆円。日本だけを見ていて届く規模ではありません。
けん玉のひとこと
29%だった海外の比率が60%になるまで、10年かかっていないところ。しかも効いたのは制度でも買収でもなく、ワールドとバイオ7という2本のソフトです。作るものを変えたら、客の住む場所のほうが変わった、という順番なんですよね。
寂しさがないと言えば嘘になります。国内向けに刻まれた手ざわりが好きだった人ほど、9割という数字は自分と関係のない話に見えるはず。
ただ、海外で稼いだお金で『バイオハザード レクイエム』のような一本が作られています。それを日本語で最初から遊べているのも確かです。690万本の作品を、翻訳を待たずに買えるのは素直にありがたいんですよね。
引っかかるのは、円建ての地域別が見えなくなったことのほうです。本数の比率は出ていても、どの地域でいくら稼いだかは外から追えません。
世界で売る会社になったのなら、その内訳こそ見せてほしいものです。決算資料は数字の羅列に見えて、どの作品がどこで売れたかの記録でもあります。次の発表は、そういう目で一緒に眺めてみたいところ。
※ カプコンの2020年3月期以降の円建て地域別売上比率と、国内ゲーム市場だけの規模は一次情報を確認しきれていないため、誤りがあればお問い合わせからお知らせください。




