『グランド・セフト・オートVI』の発売日、11月19日まであと1か月半ほどです。ここに来て、ゲーム誌ではない場所から中身の話が出てきました。
GTA6、警察とギャングに同行したロックスターが、現実の誰も名指ししない理由
10月5日に店頭に並んだファッション誌、LOVE Magazine 第27号。ロックスター・ゲームスの開発陣に取材しています。語られているのは、10年がかりで世界を組み立てた手順そのものです。
動物170種や地域ごとの天候といった完成品の中身は、Game Informer の特集で先に出ています。今回はその手前、どうやって調べたのかという話です。以下は、誌面を読んだ海外メディアが伝えた内容になります。
フロリダを走り、警察とギャングに同行した
開発を率いるアーロン・ガーバット氏が、その進め方を具体的に説明しています。現地に腰を据えて住民と時間を過ごし、集められる話は集める。その延長で、警察官にもギャングのメンバーにも同行したそうです。
動き方も残っています。最初は少人数でマイアミを出発し、周辺の町を抜け、フロリダキーズを南下してキーウェストまで走ったそうです。見た場所を記録しながら、どうゲームに移すかをその場で話し合っています。
空からも見ています。エバーグレーズのマングローブの入り江を低空で飛び、最後はスタジアムの上空に差しかかりました。そこではビヨンセの公演の最中で、ガーバット氏は翌日の地元ニュースに出たと思う、と振り返っています。
印象に残るのは、案内役への評価です。これまで会ったなかでいちばん感じのいい人たちだった、とガーバット氏は述べています。ただ、そこで聞いた話も、見せられた場所も、恐ろしいものだったと付け加えています。発言はDexerto の記事にまとまっています。
それでも「特定の誰か」は描かない
ここまで現実に踏み込んでおいて、作品は現実そのものにはしないと言い切っています。
ナラティブ担当の上級副社長はルパート・ハンフリーズ氏です。発売された瞬間に「その時代のもの」と感じられるゲームを目指す、と述べました。ただし、いま自分たちが生きている世界をそのまま映すつもりはないとも言っています。
だから特定の人物、出来事、運動について具体的になりすぎたくない、というのが方針です。開発に何年もかかる以上、短期の話題に飛びつけば、出たときにはもう古いからです。
ただし、風刺をやめるわけではありません。鏡を掲げるだけでなく、すべてを風刺的に、誇張して、もっとグロテスクにする。そこに重きを置いたとしています。
今日の世界の一つの形を作るのにこれだけ手をかけるなら、もっと過剰で、もっと狂っていて、もっと顔の前に突きつけるものでなければなりません。
ハンフリーズ氏の発言は、GamingBolt の記事などが伝えています。
同じ線引きは主人公2人にも及んでいます。ライターのエリザベス・ゴーヴィ=カーン氏は、2人とも強くて、もろくて、欠点のある人物にしたかったと語りました。ときに正しく、ときに間違い、互いから学び合える関係も意識したといいます。
ルシアは自分で決めて動く側、ジェイソンは状況に決められる側として描き分けられています。どちらかを完璧な側に置かない作りです。この対比はViceが誌面から詳しく伝えています。
現実を調べるのは、嘘を通すため
取材を尽くすのに、出てくるものは現実より過剰になる。並べると矛盾して見えますが、順番で考えると筋が通ります。
オープンワールドの文章を統括するのはジェームズ・ホートン氏です。この世界に「背景」はなく、あるのは今あなたが注意を向けていない前景だけだ、という言い方をしています。これも同じ誌面での発言で、先の GamingBolt の記事が伝えています。
プレイヤーが振り向いた先が空っぽなら、作り物だと一瞬で分かります。看板の文句も、路地の汚れ方も、警官の立ち方も、先に本物を見ておかないと置けません。
土台が本物だから、その上に乗せた誇張が成立する。土台が想像だけだと、誇張はただの作り話になります。10年かけてフロリダを歩き回ったのは、正確に写すためというより、嘘を信じさせるための下準備だったように読めます。
ハンフリーズ氏自身、没入のために現実味が要る場面があると述べています。逆に、プレイヤーの都合を優先して現実味を捨てる場面もあるそうです。どこで捨てるかを自分たちで選ぶために、まず現実を知っておく必要があったのでしょう。
けん玉のひとこと
取材の話でいちばん引っかかったのは、ヘリでビヨンセの公演の上を飛んで地元ニュースに出た、というくだり。ゲームを作るための下調べで地元のニュースになってしまうの、やりすぎていて少し笑ってしまうんですよね。
特定の人物や運動を名指ししない、という判断には納得しました。発売時点の空気をそのまま詰め込んだ作品は、数年後に触ると妙に古びて見えます。10年かけて作るものなら、なおさら賞味期限を気にするはず。
それでいて風刺は弱めないと言い切ったのは、良かったところです。角をすべて落として誰も怒らせない作りにする道もあったはずで、そちらは選びませんでした。シリーズが続いてきた理由の一つは、たぶんここにあります。
気になるのは、警察官やギャングに同行してまで集めたフロリダが、誇張をかけたあとにどれくらい残っているかです。細部の手触りは、トレーラーの絵よりも実際に歩いたときに出ます。
11月19日が来たら、まずはキーウェストまで南下してみたいところ。開発陣が走った道を、こちらも同じ順でたどってみたいんですよね。
※ LOVE Magazine 第27号の誌面そのものは一次情報を確認しきれていないため、誤りがあればお問い合わせからお知らせください。




