作品概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| タイトル | シェンムー 一章 横須賀 |
| 発売日 | 1999年12月29日(日本)、2000年11月7日(北米) |
| 機種 | ドリームキャスト |
| 開発 | セガ AM2研 |
| ディレクター | 鈴木裕 |
| ジャンル | セガの自称は「FREE」(Full Reactive Eyes Entertainment) |
| 当時の価格 | 6,800円+税 |
| 販売本数 | 全世界で約120万本 |
舞台は1986年末の横須賀です。実在するドブ板の地名がそのまま使われ、プレイヤーは商店街を歩いて人に話を聞いていきます。「一章」と付くとおり、物語は横須賀を出るところで終わります。
「FREE」という呼び方は、ジャンル名として定着しませんでした。それでも新しい言葉を用意したくなるほど、当時の枠に収まらない作りだったことは伝わってきます。
70億円という数字の内側
シェンムーは「最も製作費が使用されたテレビゲーム」としてギネス・ワールド・レコーズに登録されました。そのときの金額が70億円です。記録は後に『グランド・セフト・オートIV』へ移っています。
ただ、この70億円は鈴木裕本人が否定しています。本人の説明では実際は約50億円です。70億円にはマーケティング費用と『シェンムーII』の開発費の一部が入っているとしています。
差の20億円は、宣伝費と続編の開発費をどこまで数えるかの差です。どちらの数字も一章だけのものとは言い切れません。「一章にいくらかかったのか」は、今も確定していません。
それでも、1本のソフトにかけた金額としては桁が違いました。販売は全世界で約120万本。評価の高さとは別に、投じた額を回収できなかった作品として記録されています。
当時の評価と、売る時間が足りなかったこと
海外の集計サイト GameRankings の平均は89%でした。評価そのものは低くありません。問題は、その評価が売上に変わるまでの道のりでした。
日本の発売日は1999年12月29日です。年末商戦には間に合っていません。海外版が出たのは2000年11月で、日本から約10か月遅れています。
続編の『シェンムーII』は、ドリームキャストで2001年、北米ではXboxで2002年に出ました。販売は2機種を合わせて約47万本です。一章からさらに減りました。
セガがハード事業から手を引く、まさにその時期の出来事でもあります。背景はセガがドリームキャストの製造をやめて25年に書きました。
後の作品が当たり前にした仕組み
街には1,200を超える部屋や場所が用意されました。店の中に入れて、引き出しや棚を開けられます。手に取れるものが置いてあるだけで、歩く意味が変わります。
住人は300人ほどいて、それぞれに名前と設定、1日の行動が決まっていました。しかも全員分の声が入っています。朝に会う人と夜に会う人が違う街でした。
ゲーム内には時計があり、昼と夜が移り変わります。開発では当時の実際の気象データを取り寄せて天気に反映させたと、開発陣がファミ通のシェンムー25周年特集で語っています。
ボタン表示に合わせて入力する演出を QTE(クイック・タイム・イベント)と呼ぶようになったのも、この作品からです。格闘ゲームの操作を、そのまま見せ場に使う発想でした。
ゲームセンターにはダーツが置かれ、『ハングオン』と『スペースハリアー』はアーケード版がそのまま遊べます。港ではフォークリフトのアルバイトができました。
2026年の目線で読むと、どれも珍しくありません。箱庭の街、住人の生活時間、ボタン入力の見せ場、本編と関係のない遊び。後のオープンワールド作品が一通り持っているものです。珍しく感じないこと自体が、この作品の位置を示しています。
失敗と呼ばれた作品の続編に、7万人が出資した
16年後の2015年、『シェンムーIII』のクラウドファンディングが Kickstarter で始まりました。集まった金額は6,333,295ドル、支援者は69,320人です。
後の追加受付を含めると7,179,510ドルで、当時のKickstarter歴代最高額になりました。
商業的に失敗したと書かれ続けた作品の続編に、これだけの金額が集まりました。『シェンムーIII』は2019年11月に発売され、2022年にはアニメも作られています。
龍が如くへの系譜は、通説ほど確かではない
シェンムーを語ると『龍が如く』の名前が出てきます。実在する街を作り込み、路地と店で遊ばせる作りが重なるためです。
ただ、裏を取ると線はきれいにつながりません。名越稔洋さんは鈴木裕さんについて「ゲームのいろはを教えてくれた」と語り、師として扱っています。
一方で、シェンムーの作り方を『龍が如く』へ持ち込んだと本人が述べた記録は見当たりません。アシスタントディレクターを務めたのも名越さんではなく岡安啓司さんです。
確かなのは、名越さんが在籍していたアミューズメントヴィジョンからスタッフがシェンムーの開発に合流していたことまでです。
今遊ぶ方法
2018年に出た『シェンムー I&II』に、ドリームキャストの2作が1本に収められています。日本ではPlayStation Storeの商品ページで4,389円です。
10月5日に見た時点では70%オフの1,316円で、10月7日までの表示が出ていました。
Steamのページはあるものの、日本のアカウントから開くと購入できる地域ではないという案内が出ます。Switch と Switch 2 への移植は、2026年10月の時点では出ていません。
ドリームキャストの他の作品をどこで買えるかは、ドリームキャストを今遊ぶ方法にまとめました。
『シェンムーIII』は PS4 と Steam で配信中です。Steam の定価は3,589円です。
さらに『シェンムーIII エンハンスド』が2026年内に出る予定です。シリーズが任天堂のハードに乗るのは初めてになります。
対応は Switch 2、PS5、Xbox Series X|S、PC で、パッケージ版の発売元は ININ Games です。
けん玉のひとこと
早すぎたのか、という問いへの答えは、半分そうで半分違うと思っています。仕組みは確かに早かったです。ただ、早かったのは仕組みだけで、受け止める台数と時間が足りなかったところ。
70億円か50億円かという話も、結局は宣伝費をどこまで数えるかの違いです。どちらにしても、1999年にこれを通したセガと鈴木裕さんの判断はすごいんですよね。回収できなかったからといって、賭けそのものを笑う気にはなりません。
今の作品が当たり前に積んでいるものを、先に組み上げた1本です。当時のかたちで遊べる道が残っているのは、ありがたいところ。
迷っている人の分かれ目は、物語の速さだと思います。歩く時間そのものを面白がれる人なら、26年前の横須賀は今でも歩きごたえがあるはず。安い週のうちに触れておく価値はあります。
※ 『一章』単独の開発費は一次情報を確認しきれていないため、誤りがあればお問い合わせからお知らせください。





