スマートフォンでゲームを遊ぶのが当たり前になる前、ソーシャルゲームは折りたたみの携帯電話のブラウザで動いていました。ダウンロードは要りません。URL を開けば、そこに続きがありました。
【連載 第1回】GREE と Mobage の2012年、ソーシャルゲームはガラケーからスマホアプリへ移った

その遊び場は、もう開けません。2020年にフィーチャーフォン版の Mobage が終わり、GREE のガラケー向け URL も使えなくなりました。終わった作品を1本ずつ訪ねる前に、土台のほうが動いた経緯を並べておきます。
インストールが要らないことが、いちばんの強みだった
GREE が『釣り★スタ』を出したのは2007年5月24日です。魚を釣って、釣果を仲間に見せる。携帯電話のブラウザだけで完結する作りでした。
GREE の登録会員数が1,000万人を超えたのは2009年4月5日です。3月の1か月だけで85万人増えた、と当時のプレスリリースにあります。
理由のひとつは、遊び始めるまでの手間がほとんどなかったことです。端末を選ばず、インストールもしない。当時の携帯電話に入っていたブラウザが、そのままゲーム機の役をしていました。
| 時期 | 出来事 | どこの話か |
|---|---|---|
| 2007年5月24日 | GREE が『釣り★スタ』の配信を開始 | ガラケー |
| 2009年4月5日 | GREE の登録会員数が1,000万人を突破 | ガラケー |
| 2012年2月20日 | 『パズル&ドラゴンズ』の iOS 版が配信開始 | スマホ |
| 2012年5月18日 | 消費者庁が「カード合わせ」についての考え方を公表 | ルール |
| 2012年7月1日 | 同庁が景品表示法の執行を始める | ルール |
| 2012年8月14日 | グリーが2012年6月期の売上高1,582億円を発表 | ガラケー |
| 2012年9月18日 | 『パズル&ドラゴンズ』の Android 版が配信開始 | スマホ |
| 2020年12月15日 | フィーチャーフォン版 Mobage がサービス終了 | ガラケー |
| 2022年3月 | ガラケー版 GREE の URL が使えなくなったと案内 | ガラケー |
| 2024年5月24日 | 『パズル&ドラゴンズ』が国内累計6,200万ダウンロード | スマホ |
集めさせる見せ方が、2012年の夏に使えなくなった
2012年5月18日、消費者庁がコンプガチャを景品表示法の「カード合わせ」に当たると整理しました。執行は同年7月1日から。ガチャ自体ではなく、異なる種類を揃えさせる形だけが対象です。
ガラケーのソーシャルゲームには重い話でした。「あと1枚で揃う」という見せ方が、7月以降は使えません。集める楽しさで課金を支えていた作品ほど、作り直す幅が大きかったことになります。
入口がアプリストアに移った年に、ガラケーの売上は頂点だった
ガンホーが『パズル&ドラゴンズ』の iOS 版を配信したのが2月20日、Android 版が9月18日です。線が引かれたのと同じ年に、別の流れが始まっていました。
違いは中身よりも届き方でした。ブラウザを開くのではなく、App Store や Google Play からダウンロードして起動する。課金もストアを通ります。
ガンホーの発表によれば、国内の累計ダウンロードは2024年5月24日に6,200万を超えました。配信開始から12年以上動き続けた数字です。
一方で、グリーの売上が頂点に届いたのも同じころでした。2012年8月14日の決算発表では、2012年6月期の売上高が1,582億円、営業利益が827億円。どちらも前期から2倍以上に増えています。
この山の中身は、まだガラケーのブラウザで遊ばれていたものです。頂点と、遊び場が移り始めた時期が同じ年に重なっていたことになります。
作品より先に、入口が閉じた
作品のサービスが終わる前に、土台のほうが閉じることがあります。フィーチャーフォン版の Mobage は、2020年12月15日の14時59分で終わりました。
DeNA は続けて遊ぶならスマートフォン版か Yahoo!モバゲーを使うよう案内しています。GREE も2022年3月のお知らせでガラケー版の終了に触れています。m.gree.jp などの URL は、今はどこにもつながりません。
つまり当時のソーシャルゲームは、二通りの閉じ方をしています。作品ごとにサービスが終わる場合と、作品より先に入口が消える場合です。
後者は、個別の終了告知が出ないまま端末も回線も入れ替わっていきます。何年何月まで遊べたのかを、後から確かめる手がかりがありません。
端末が入れ替わっても、運ばれた作品は残っている
2007年に始まった『釣り★スタ』は、今も配信されています。GREE の作品ページには、iOS 13.0 以降と Android OS 8 以降が並んでいます。今はスマートフォンのアプリです。基本プレイは無料で、アプリ内課金があります。
配信から19年が過ぎました。ガラケーで始まった作品が、端末とストアが入れ替わった先でも動いている例です。『パズル&ドラゴンズ』も配信が続いています。
当時の作りを読み返すなら、新書『ソーシャルゲームのすごい仕組み』(まつもとあつし)が残っています。2012年4月、線が引かれる1か月前に出た本です。
けん玉のひとこと
2012年は「コンプガチャが禁じられた年」として覚えていました。並べ直すと、同じ年に遊び場そのものが動いていたんですよね。
課金の作り方を組み替えながら、主役がブラウザからアプリへ移っていきます。2つが重なった年に、スマホへ運ばれた作品と運ばれなかった作品が分かれたはず。どれだけの数が残れなかったのかは、私にはまだ数えられていません。
それでも作り手は運び続けました。『釣り★スタ』が19年動いているのは、端末が変わるたびに作り直してきた結果なところ。畳まずに連れてきた判断のほうが、私には珍しく見えます。
惜しいのは、終わったものの記録が残りにくいところ。GREE の2022年3月のお知らせも、会社の整理でいつ消えてもおかしくありません。
次の回を書くころにまだ開けるかどうかは、私にも分かりません。だから読めるうちに、日付と数字を書き写しておきたいんですよね。
ここから先は、実際に配信が終わった作品を1本ずつ訪ねていきます。当時遊んでいた名前が出てきたら、その回で一緒に思い出してもらえるとうれしいです。
※ 『釣り★スタ』の配信日とグリー2012年6月期の業績は一次情報を確認しきれていないため、誤りがあればお問い合わせからお知らせください。
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