スマートフォンでカードを集めて戦うゲームが、どの画面にも並んでいた時期があります。『拡散性ミリオンアーサー』は、その先頭にいた1本でした。
【連載 第2回】拡散性ミリオンアーサー、後継作に場所を譲って2015年に閉じたカードバトルRPG

スクウェア・エニックスが2012年4月に配信を始め、2015年3月30日にスマートフォン版を閉じています。ガラケーからスマホへ遊び場が移った経緯は前回で整理しました。今回は、その移った先で起きたことを1本の作品で追います。
配信から終了まで
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| タイトル | 拡散性ミリオンアーサー |
| 運営 | スクウェア・エニックス |
| ジャンル | オンラインカードバトルRPG |
| 配信開始 | 2012年4月(iOS 版)。のちに Android 版 |
| ほかの機種 | PlayStation Vita 版が2013年4月。ニンテンドー3DS 版なども |
| 課金 | 基本プレイ無料、アイテム課金 |
| スマホ版の終了 | 2015年3月30日16:00 |
| すべての機種での終了 | 2017年4月28日(PlayStation Vita 版) |
絵の数で押し切った、カードバトルの代表格
騎士のカードを集めて並べ、戦わせる。戦闘はプレイヤーが細かく操作せず、自動で進む形でした。シナリオは小説家の鎌池和馬氏が書いています。
当時の強みは、カードに描かれた絵の量でした。多くの絵師がカードごとに描き分けていて、引くたびに違う絵が出てきます。集める動機が、強さだけでなく絵のほうにもありました。
登録ユーザー数は2013年1月に100万人、同年7月には全世界で500万人を超えたと報じられています。配信からまだ1年3か月ほどの数字です。
前回書いたとおり、2012年はコンプガチャの線引きとスマホアプリへの移行が重なった年でした。本作が出た4月は、その線が引かれる1か月前にあたります。
終了が告げられたのは、配信から3年経たない12月だった
2014年12月26日、スクウェア・エニックスがスマートフォン版の終了を発表しました。日程は細かく区切られています。
12月27日0:00にサービスを一時停止し、2015年1月19日に再開。1月30日16:00で有料ポイントの販売を終え、3月30日16:00にサービスを止める、という組み方です。
再開したあとは、有料アイテムなしで遊べるイベントを入れる、とも案内されました。終わると決まった作品を、そこから3か月動かし続けたことになります。
プロデューサーの岩野弘明氏は、公式のコメントで理由をこう書いています。
期待に応えられるような運営体制を築くことが難しく、このまま運営を続けたとしても皆様のご期待を裏切る形になると考えた
(ファミ通App に掲載された公式コメント)
ファミ通App の取材では、もう少し踏み込んだ事情が出ています。配信の前後でコアスタッフが抜け、プログラムに手を入れにくい状態が続いたこと。そして2014年11月19日に出た『乖離性ミリオンアーサー』へ、利用者が大きく動いたことです。
同席した安藤武博氏は、この決断を「力不足による自爆」と表現しました。もともとは2本を並べて動かすつもりだった、とも語っています。
開発中だった『デッキメイクミリオンアーサー』も、このとき中止になりました。『乖離性』と中身が近くなったため、構想をそちらへまとめた、という説明です。
送り出された先は、ひとつではなかった
終了の告知には、引き継ぎ特典の予告が添えられていました。拡散性のプレイ実績に応じて、『乖離性ミリオンアーサー』で使えるカードやメインキャラクターを渡す、という内容です。
PlayStation Vita 版・ニンテンドー3DS 版・Amazon 版の利用者にも、特典を検討するとありました。移るのはカードやキャラクターで、育てたデータをまるごと持っていく形ではありません。
送り先はもうひとつありました。終了の5日前、2015年3月25日に、スクウェア・エニックスのサポートセンターがエクスタシスへの引き継ぎ案内を出しています。
新作『ミリオンアーサー エクスタシス』への特典です。事前登録でカードが1枚もらえる、という形でした。同じ作品の利用者が、二手に分かれて送り出されたことになります。
この終わり方が今も語られるのは、運営が理由を自分の言葉で説明した例が少ないためです。消える日付だけが残る作品のほうが、ずっと多くあります。
今、拡散性に触れる手立て
拡散性そのものは、どの機種でも遊べません。2017年4月28日に PlayStation Vita 版が終わり、すべての機種での運営が終わりました。配信開始から5年です。
近いところで残っているものが2つあります。ひとつは『ミリオンアーサー アルカナブラッド』です。シリーズのキャラクターが戦う対戦格闘で、Steam のストアページで今も買えます。通常価格は4,839円、日本語の音声が入っています。
もうひとつは紙のほうです。『拡散性ミリオンアーサー 画集』が、スクウェア・エニックスの e-STORE に在庫として並んでいます。2012年8月に出た2,934円の本で、当時のカードの絵を見返すならこれが確実な手です。
けん玉のひとこと
2012年のスマホの画面を思い出すと、カードを引く演出ばかりが並んでいたんですよね。拡散性はその真ん中にいて、絵の量で押し切った1本でした。
終わり方を読み直して意外だったのは、畳む側がかなり丁寧なところ。12月に告げて3月まで動かし、途中に有料アイテム抜きのイベントまで入れています。日付だけ決めて静かに閉じる例も見てきたので、ここは手間をかけたほうだと思います。
一方で、後継作が先に出てからの終了告知という順番は、遊んでいた人には重かったはず。11月に『乖離性』が出て、翌月には終了が発表されています。積み上げたカードの行き先が分かるまで、1か月ちょっとしかありません。
それでも、2本を並べて動かすつもりだった、という話は本音に聞こえます。「力不足による自爆」と言い切った安藤氏の言葉も、ごまかしていません。終わらせる側が理由を自分の口で説明した例として、私は覚えておきたいところ。
惜しいのは、その告知のページがもう開けないこと。残っているのは当時の記事と、サポートセンターに1本だけ残った引き継ぎの案内です。作品より先に、記録のほうが消えていきます。
次の回は、同じシリーズで違う終わらせ方をした作品を訪ねます。当時カードを並べていた方は、記憶が重なるところを見つけてもらえたらうれしいです。
※ 登録ユーザー数の500万人到達時期は一次情報を確認しきれていないため、誤りがあればお問い合わせからお知らせください。
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