コラム

No Man's Sky の10年。批判は「問題なし」で終わったのに、Hello Games は40回直し続けました

No Man's Sky の10年。批判は「問題なし」で終わったのに、Hello Games は40回直し続けました
海外の報道を管理人が日本語で要約した記事です。原文は記事末尾の出典からご覧ください。

発売から10年たったゲームに、大きな更新が来ることはあまりありません。『No Man’s Sky』は2026年9月9日、Cosmos という名前のアップデートを配信しました。バージョンは7.0です。

宇宙ステーションを自分で運営でき、銀河同盟に加われます。軌道上に拠点を建てられて、宇宙をさまよう難破船の内部にも入れます。10周年記念のエクスペディション「Our Journey Continues」も同時に始まりました。

このゲームの2016年を覚えている人には、この状況自体が少し不思議に映るはずです。

2016年8月に何が起きたか

『No Man’s Sky』が初めて表に出たのは2013年12月、VGX Awards の場でした。英国の小さなスタジオ Hello Games が作り、自社で売る作品でした。無限に近い数の惑星を手続き生成で作り出す、という触れ込みです。

発売は2016年8月9日、PS4 の北米版が先で、PC 版は8月12日です。当時のスタジオは12人ほどでした。もとは4人で始まった規模です。

出てすぐに批判が集まりました。マルチプレイヤーが大幅に制限されていたこと。発売前のやり取りで示唆された要素の一部が、実際には入っていなかったこと。広い宇宙が単調だという指摘も重なりました。

Metacritic の批評家スコアは PS4 版が71点、PC 版が61点です。Steam の同時接続者数は初日の21万人超から落ち続け、9月末には2,000人台まで下がったとされています。

Steam や PlayStation Store、Amazon が個別に返金へ応じたと当時報じられました。英国の広告基準協議会(ASA)も調査に入っています。

裁定は2016年11月30日に出ました。結論は「広告は誤解を招くものではない」。手続き生成のゲームである以上、見せた映像と個々のプレイ体験が一致しないことはある、という理屈です。

沈黙してから、直し始めた

Hello Games のショーン・マレー(Sean Murray)さんは、その後ほとんど公の場に出なくなりました。本人が後年の講演で振り返っています。発売後2年近くメディアの取材を受けず、コミュニティにも3か月近く何も言わなかった、と。

代わりに出てきたのがアップデートでした。2016年11月の Foundation で拠点を建てられるようになります。2017年3月の Pathfinder では地上を走る乗り物が加わりました。

同年8月の Atlas Rises で、16人までが同じ宇宙にいられるようになります。流れが変わったのは2018年7月24日の NEXT です。最大4人で一緒に探索と建設ができるマルチプレイヤーが入りました。

視点も一人称と三人称で切り替えられるようになり、同じ日に Xbox One 版が出ています。発売時に足りないと言われた部分が、2年かけて形になりました。

そのあとも止まりませんでした。2019年8月の Beyond で VR に対応します。VR という機械のほうの10年については、PSVR の販売台数を追った記事にまとめました。

2020年9月の Origins では惑星の生成そのものを作り替えています。同年11月に PS5 版と Xbox Series 版が出ます。2022年10月の Waypoint で Switch 版、2023年6月に macOS 版が加わりました。

2023年8月の Echoes で新しい種族が加わります。2024年の Worlds Part I では惑星生成が全面刷新されました。2025年の Worlds Part II で、ガス惑星と水の世界が追加されています。

惑星の作り直しだけで2回やっています。10年前に「単調だ」と言われた部分に、いちばん手が入りました。

40回、全部無料だった

10周年に合わせてマレーさんが公開した書簡に、数字が書かれています。これまでのアップデートは通算40回。そのすべてが無料でした。

有料の拡張パックを出さずに更新を続けてきた、ということです。2020年6月には Xbox Game Pass にも入り、追加から1か月で100万人以上が新たに遊んだとされています。

Steam のストアページを見ると、9月10日時点で全期間のレビューは「非常に好評」でした。18万件を超えるうち81%が好評で、直近30日に限れば92%まで上がります。

けん玉の見方

きれいな話に見えますが、素直に感心してばかりもいられません。

まず、これが誰にでもできる選び方ではないからです。Hello Games は10年のあいだ、新作を出さずに同じ1本を直し続けました。それでも期限を切られず、途中で計画を畳まされることもありませんでした。

同じことを中堅のスタジオがやったら、その前に資金が尽きます。フランスの DON’T NOD が決算に継続企業の前提に関する注記を書いた話を少し前に取り上げました。あちらは決算のたびに数字が外へ出て、次の作品を出し続けなければ止まる側です。

もうひとつ引っかかるのは、ASA の裁定が「問題なし」で終わっていることです。あの結論のままなら、Hello Games に直す義務はありませんでした。10年直したのは、義務ではなく選択だったことになります。

そう考えると、この件から引き出せる教訓は「誠実にやり直せば許される」ではありません。批判が出たあとに黙って作り続けられる時間と、責任を負わずに済む立場が、たまたま同じ会社にそろっていただけです。

4人で始まったスタジオは、いま70人ほどの規模になりました。10年で広がったのは、宇宙より会社のほうです。

次の作品『Light No Fire』は2023年12月に発表されたきり、発売日が出ていません。この発売日が出た日が、答え合わせになります。そこから先も Cosmos 級の更新が続くなら、10年の理由は会社の作りではなく、この人たちの性分だったということです。

いま始めるなら、PC・PS5・Xbox Series・Switch のどれでも、10年分が入った状態から遊べます。

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