ソニーが語っていないこと
コジマプロダクションの『PHYSINT』は、発売元が替わりました。2024年2月のState of Playで発表された企画です。ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)が降り、Xboxが引き継いでいます。
小島秀夫監督によれば、中止の通達が届いたのは2026年6月でした。PlayStationは公式コメントで「熟慮の末、協業から離れる難しい決断をした」と述べています。なぜ手を引いたのかには触れていません。
その空白を埋めたのが海外報道です。そこにあるのは関係者の証言であって、ソニーが認めた事実ではありません。
ブルームバーグが伝える理由
9月11日、ブルームバーグのジェイソン・シュライアー記者が中止の経緯を報じました。Video Games ChronicleやGematsuが伝えている内容は、いずれもこの報道を引いたものです。各社が別々に取材して一致した話ではありません。
VGCが報じる理由は主に3つです。『デス・ストランディング』1作目と続編の収益が期待に届かなかったこと。発売まで数年ある段階で、すでに納期遅延と予算超過が見込まれたこと。
3つ目は、『Concord』の失敗後にSIEが制作の節目の審査を厳しくしたことです。そこに『PHYSINT』が対応しきれなかったとされています。
Gematsuなど一部の報道は、恒久的な独占ではない作品へ数億ドルを投じることへの慎重さも挙げています。小島監督と近い関係にあったSIE幹部が近年退社したことも、そこでは背景とされています。
10年で終わった契約
コジマプロダクションが独立したのは2015年12月でした。当時のソニー・コンピュータエンタテインメントの支援を受け、PS4向け新作を作る契約を同時に結んでいます。
そこから生まれたのが『デス・ストランディング』です。2019年11月の発売後、コジマプロダクションはPS4版とPC版の合計で500万本と公表しました。2021年3月末時点の数字です。
2025年6月に出た続編『DEATH STRANDING 2: ON THE BEACH』の販売本数は、公表されていません。1作目の500万本と並べて比べられる数字が、外には出ていないということです。
その『PHYSINT』の移籍先は、コジマプロダクションの日本語の告知で正式に発表されています。
独占の値段が合わなくなった
続編の数字が公表されていない以上、売上不振という評価が妥当かどうかを私は判断できません。判断できるのは、出す側の計算が変わったということです。
時間差で他機種に出る作品は、プレイステーション本体を売る力を持ち続けません。独占の期間が切れれば、その作品はどこでも遊べるものになります。数億ドルを出す側から見れば、見返りの続く期間が短いわけです。
『Concord』の一件はこれに拍車をかけたはずです。発売から2週間で販売を止める判断をした会社が、審査を厳しくしないほうが不自然でしょう。大型の企画を止める判断そのものは、経営としては理解できます。
当事者が黙ったままの決着
気になるのは、中止の理由が今も報道の中にしかないことです。ソニーは具体的な指摘を認めても否定してもいません。小島監督も、中止の通達を受けた経緯は語りましたが、売上や予算という個別の話には触れていません。
当事者が黙っていると、読者は誰かの証言を信じるかどうかしか選べなくなります。作り手にとっても、降ろされた理由が外から語られる状況は落ち着かないはずです。
それでも企画そのものは止まりませんでした。中止になった企画のその後についてはScaleboundの復活条件でも書きましたが、あちらは10年動いていません。降ろされてから自分たちで次の発売元を決めた今回は、それとは違う道をたどっています。
計算が合わなかっただけなら、別の相手なら合うということでもあります。答え合わせができるのは、発売時に対応機種がどこまで広がるかを見たときです。時間差でPS5にも出るなら、独占に数億ドルという見方のほうが先に古びていたことになります。
※ ブルームバーグが伝える中止の理由は一次情報を確認しきれていないため、誤りがあればお問い合わせからお知らせください。





