コラム

Build A Rocket Boy が管財手続き入り。巨額出資を受けたスタジオが1本で傾く形

Build A Rocket Boy が管財手続き入り。巨額出資を受けたスタジオが1本で傾く形

2026年9月25日、イギリスの登記所に一枚の書類が届きました。「AM01(Scot)」、管財人の選任届です。提出したのは、スコットランド・エディンバラの BUILD A ROCKET BOY LTD.。

同社の登記情報は、いま「In Administration」と表示されています。破産とは少し違い、会社を再建するか整理するかの判断を外部の専門家に委ねた状態です。

『MindsEye』を世に出したスタジオが、発売から1年3か月で自分の手を離れました。

登記に残っている、傾いていく順番

Build A Rocket Boy の設立は2016年6月6日です。登記上の名前は Calex Incorporations、Royal Circus と変わりました。2018年10月に今の社名になっています。

創業者は Leslie Benzies。『グランド・セフト・オート』シリーズを手がけた Rockstar North の元社長です。名前だけで資金が集まる立場の人でした。

実際に集まりました。2024年1月、RedBird Capital Partners が主導する調達で1億1000万ドル。出資者には NetEase Games や Galaxy Interactive が並びます。

変化が登記に出たのは2026年の春です。5月から6月にかけて、社外から来ていた取締役が4人、相次いで退任しています。出資した側が席を引いた形でした。

そこから3か月あまりで、管財人の選任に至りました。傾いていく順番が、登記の日付としてそのまま残っています。

評価とお金が、同じ方向に落ちた

『MindsEye』の発売は2025年6月10日。対応機種は PS5、Xbox Series X|S、PC です。パブリッシングは IO Interactive の Partners 部門が担いました。

評価は厳しいものでした。OpenCritic の平均点は33点、45件のレビューで推奨は11%です(2026年9月27日時点)。Metacritic も PC が39点、PS5が29点、Xbox Series X が44点と並びます。

発売直後から動作の不安定さが指摘され、返金の報告も出ました。解雇リスクの通知が社内に回り始めたのは、その発売のすぐあとです。2025年7月までに、対象は300人規模へ広がったと報じられています。

お金の側も同じです。2025年9月期の決算では、営業損失が4750万ポンド、債権者への未払いが6180万ポンド。手元の現金は2024年末の5200万ポンドから1940万ポンドまで減りました。

2026年5月には約250人のうち170人を削減し、残ったのは80人ほどです。1本の評価が定まってから会社の形が消えるまで、1年3か月しかかかっていません。

この形は、何度も繰り返されてきた

新しい会社が大きな資金を集め、1本の大作に賭け、外した時点で消えます。この形には前例があります。

2012年の38 Studios が分かりやすい例です。元大リーグ投手のカート・シリングが立ち上げ、ロードアイランド州から7500万ドルの保証融資を引き出しました。

『Kingdoms of Amalur: Reckoning』を2012年2月7日に発売しました。しかし売上は採算に届きません。同年5月に全従業員を解雇し、6月7日に破産を申請します。州民が最終的に負担した額は、約8800万ドルでした。

近い年では Firewalk Studios があります。ソニーが2022年に買収したスタジオで、『Concord』を2024年8月23日に発売しました。9月6日にはサーバーを止め、全額返金に踏み切っています。

10月29日にソニーが閉鎖を発表し、174人が職を失いました。発売から2か月あまりの出来事です。

作品が出ないまま消えた例もあります。Deviation Games は2020年に設立され、2021年6月にソニーとの新規IPでの提携を発表しました。しかし1本も出さないまま、2024年3月に閉鎖しています。

出口が1本しかないと、やり直せない

この4社に共通するのは、収入の出口が発売前の1本しかなかったことです。既存作の売上も、運営中のタイトルもありません。

大手なら、外した1本を別の部署が支えます。セガが「Super Game」構想から降りた判断は、会社そのものは残る前提でした。ソニーが『PHYSINT』から降りた判断も同じです。

新興スタジオに、その余地はありません。出資で数年ぶんの開発費を先に受け取り、発売でそれを回収します。失敗した時点で、次の資金の話ができなくなります。

投資マネーそのものが悪いわけではないです。実績のある作り手が大手を離れて自分の会社を持てるのは、この資金があるからこそです。選べる形が増えたこと自体は歓迎したいところです。

引っかかるのは賭けの単位のほうです。AAA級の開発費と5年を超える期間は、1回の結果が出るまでに会社の寿命ぶんを使い切ってしまいます。やり直す体力が残りません。

なお、管財手続きに入ったからといって、会社の終わりが決まったわけではありません。同社の CEO は、『MindsEye』をあらためて出し直すことを目指すと話しています。

けん玉のひとこと

『MindsEye』の評価が厳しかったのは、数字を見れば動かしようがありません。ただ、Rockstar を離れた人が自分のスタジオを構えたこと自体、簡単な話ではないんですよね。誰の看板も借りずに新しいIPを出したのも、同じくらい重いことです。

気になるのは、その挑戦が1回しか許されない仕組みのほう。5年かけて1本を出し、外れたら終わり。この条件だと、作り手はどうしても安全な作りに寄せるはずです。

理想を言えば、大作を1本に賭けるより、中くらいの規模を2本出せる形のほうが長く続くと思います。出資する側にとっても、1本目で外したときに取り返しがつくはず。

もし『MindsEye』を遊んだ人がいたら、どこが面白くて、どこが惜しかったかを覚えておいてほしいんですよね。出し直されるときが来たら、そこがどう変わったか、一緒に見届けたいと思います。

※ 2025年9月期の決算の数値と、2025年7月までの人員削減の規模は一次情報を確認しきれていないため、誤りがあればお問い合わせからお知らせください。

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