カプコンが公開している「ミリオンセールスタイトル」の一覧に、気になる欄があります。作品名でも本数でもなく、右端の機種の欄です。
カプコン・任天堂・ファミ通ゲーム白書で違う、ミリオンセラー100万本の数え方

新しい作品には、たいてい「DL」の文字が入っています。古い作品には入っていません。ハードの名前だけが並んでいます。
一覧の説明には、100万本以上売れたソフトをミリオンセラーと呼び、大ヒットの目安としている、とあります。この目安そのものは昔から変わっていません。変わったのは、100万本をどう数えるかのほうです。
同じ表に、数え方の違う作品が並んでいる
一覧は2026年6月30日時点で128タイトルあります。首位は『モンスターハンター:ワールド』の2,240万本(2018年)です。2位は『バイオハザード RE:2』の1,970万本(2019年)でした。どちらも機種の欄に「DL」があります。
さかのぼると景色が変わります。『ストリートファイターⅡ』は630万本(1992年・SFC)、『バイオハザード2』は496万本(1998年・PS)。機種の欄はハード名だけで、DLの文字はありません。
一覧の最後、128位は『デビル メイ クライ 3 Special Edition』です。100万本で、2006年のPS2作品でした。20年前にちょうど100万本へ届いた作品が、いまも末尾に残っています。
では「DL」は何を指すのか。一覧の下には、次の注記が添えられています。
DL(ダウンロード)には、各種デジタル販売本数が含まれています。
つまり一つの表に、店頭のパッケージだけで100万本に達した作品と、ダウンロードを合わせて達した作品が並んでいます。
カプコンの販売本数は、9割以上がダウンロードになった
カプコンは決算期ごとの内訳もコンシューマ販売本数のページで公開しています。ここを見ると、内訳の変わり方がはっきりします。
2026年3月期の販売本数は5,907万本でした。うちデジタルが5,493万本、パッケージが413万本で、デジタル比率は93.0%です。
4年前の2022年3月期は、総数3,260万本のうちデジタルが2,460万本、パッケージが800万本。比率は75.5%でした。総数が1.8倍に増える一方で、パッケージは約半分に減っています。
2027年3月期は計画値として、総数6,500万本・デジタル6,200万本・比率95.4%が置かれています。まだ実績ではありませんが、会社が前提にしている方向は読み取れます。
ただし、このページに実績として載っているのは2022年3月期以降の5期分だけです。20年前の比率がどうだったかは、けん玉には出せません。
「100万本」には三通りの物差しがある
任天堂の主要タイトル販売実績にも注記があります。全世界の連結累計であること、ハードに同梱した分を含むこと、ダウンロード版を含むこと。この三つです。
2026年6月末時点の首位は『マリオカート8 デラックス』の7,153万本です。ここにはハードに同梱された分も入っています。1本ずつ選んで買われた数とは、意味が少し違います。
一方、角川アスキー総合研究所は2025年8月6日に『ファミ通ゲーム白書2025』を発表しました。ここに載る国内2005〜2024年の推定販売本数は、集計の対象をパッケージのみと明記しています。
この20年の国内最多は『あつまれ どうぶつの森』の8,022,435本でした。2位は『New スーパーマリオブラザーズ』の6,435,077本です。3位は『マリオカート8 デラックス』の6,167,617本でした。
気づくのは『マリオカート8 デラックス』が両方に出ていることです。任天堂の資料では7,153万本、ゲーム白書では6,167,617本。同じ作品で11倍以上ずれます。
同じ「100万本」でも、全世界のDL込み、全世界の同梱込み、国内のパッケージのみ、と物差しが三つあります。どれが正しいという話ではなく、数字を出している資料が別なだけです。
けん玉の見方
数え方が広がったのだから、いまのミリオンは昔より軽い。そう言い切りたくなりますが、そこは慎重に見たいところです。売る側の前提も一緒に動いているからです。
パッケージだけを置いていた時代は、店の棚と生産本数が上限になりました。いまは配信で世界中へ同時に出せます。母数が変われば、達成の難しさも変わります。100万本という線だけを固定して20年前と今を並べても、比べたことにはなりません。
けん玉が面白いと思うのは、カプコンがこの一覧をいまも更新している点です。デジタル比率が93.0%まで来ても、区切りは100万本のままです。
桁が上がった作品はモンスターハンターの数字の並びで見たとおりです。それでも一覧の下のほうには、100万本ちょうどの作品が残っています。上と下で20倍以上の差があっても、同じ表に載る。
この区切りがいつまで持つかは、カプコン自身の数字で確かめられます。会社は2027年3月期にデジタル比率95.4%を見込んでいます。
その実績が出たとき、区切りが100万本のままか、注記のほうが書き換わるか。同じページをもう一度開けば分かります。
数字を読むときは、まず注記を見る
本数を比べるときに最初に見るべきなのは、順位でも桁でもなく注記です。どこの市場か、ダウンロードを含むか、同梱を含むか。今回見た三つの資料は、どれもそこを明記していました。書いてある以上、読み違えるのは読む側の落ち度です。
ファイナルファンタジーの累計本数を追ったときも同じでした。『マリオカート8 デラックス』の数字が二つあるのも、隠しているからではありません。
100万本という線は、この20年動いていません。動いたのは線の位置ではなく、線の手前で何を数に入れるかのほうです。




