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『ストリートファイター X 鉄拳』のディスク内DLC論争、格闘ゲームの追加キャラはどう売られるようになったか

『ストリートファイター X 鉄拳』のディスク内DLC論争、格闘ゲームの追加キャラはどう売られるようになったか

格闘ゲームの追加キャラクターは、いまでは本編の発売前から予定が公開されます。何人来るのか、いつ配信されるのかが、買う前に分かる形です。

ただ、この売り方が受け入れられるまでには、それなりの騒ぎがありました。いちばん大きかったのは2012年の『ストリートファイター X 鉄拳』です。追加キャラのデータが、発売時点ですでにディスクに入っていました。

発売日前夜、ディスクの中から12人分の鍵が見つかった

『ストリートファイター X 鉄拳』はカプコンの対戦格闘です。PS3とXbox 360版の日本での発売日は2012年3月8日、北米は3月6日でした。PC版は同年5月、PS Vita版は10月25日に出ています。

見つかったのは、家庭用の発売前日です。ディスクの中に、追加キャラクター12体のデータが入っていました。

しかも置いてあるだけではありません。モーションもボイスもエンディングまでそろった状態で、鍵をかけて収録されていたと報じられています。

買った時点で、ディスクには12人分の中身がある。それを遊ぶために、あとから別の代金を払う。そういう構造だったわけです。

「配信方式が違うだけ」という説明が通らなかった

カプコンはこの件について、米国の消費者苦情機関であるBBBに回答しています。ディスクにロックした状態で入れておくのと、後日まとめてダウンロードさせるのとでは、配信のしかたが違うだけです。実質的な違いはない、という説明でした。

プロデューサーの小野義徳氏は、PC版についてハードディスクの容量を節約する狙いだったと語っています。解除するmodが出回ることを懸念していた、という話も出ていました。

理屈としては筋が通っています。それでも説明は通りませんでした。手元の円盤に入っているのに自分は持っていない、という感覚のほうが強かったのだと思います。

カプコン自身、その2年前には違う説明をしていました。2010年の『スーパーストリートファイターIV』を単体のディスクで出したときのことです。

小野氏は、追加キャラ10体やバランス調整、オンライン周りの改善まで含めると変更が大きすぎる、と述べています。DLCで足すのではなくディスクで出す必要がある、という理由づけでした。フルプライスにはしないとも言っています。

大きな追加はディスク、小さな追加はDLC。その線引きが、ディスクの中にDLCを置いた時点で分からなくなりました。当時から整合性を突かれていたのは、ここだったはずです。

遊べば届く通貨が、批判の的を外した

『ストリートファイターV』(2016年)で、カプコンは売り方を変えました。シーズンパスで追加キャラ6体をまとめて売り、同時にゲーム内通貨でも手に入るようにしたのです。

この通貨は「ファイトマネー」と呼ばれ、遊んでいれば貯まります。お金を出して先に使うか、時間をかけて貯めるか。買う側が選べる形になりました。

ディスクの中の鍵とは、ここが決定的に違います。払わなければ永久に触れないのではなく、遊べば届く。批判の的が、この一手でかなり外れました。

任天堂も近い時期に、まとめ売りの形を取っています。『大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL』の追加ファイターのページを見ると、ファイターパスは5体で24.99ドルです。第2弾は6体で29.99ドルでした。

パスに誰が入るかは、買った時点では全員分かりませんでした。それでも荒れなかったのは、鍵をかけた中身を売っているわけではないからだと思います。

発売前にロードマップを出すのが普通になった

いまは、追加キャラの予定が本編の発売前に出ます。『ストリートファイター6』の発売は2023年6月2日でしたが、4月20日の配信番組でイヤー1の中身が公開されていました。

イヤー1キャラクターパスは追加キャラ4体で、Steamでの表示価格は3,000円です。内訳はラシード、A.K.I.、エド、豪鬼の4人でした。イヤー2にはM.バイソン、テリー、マイ、エレナが入っています。

『GUILTY GEAR -STRIVE-』(2021年)も、発売時点でシーズンパス1を売りました。石渡太輔氏は直後から、投入時期を明かしています。先に予定を見せる運びは、もう例外ではありません。

ただ、先に見せれば揉めないわけでもない。『鉄拳8』が2024年に踏んだのは、そこでした。本編の発売前にエディ・ゴルドの参戦を発表した時点で、すでに反発が出ています。

その秋には、シーズンパスを買った人にも追加で約5ドルが必要なステージ「源満寺」の売り方に、批判が集まりました。パスの中に入っていると思っていた人が多かったわけです。

バンダイナムコは謝罪しています。期待に応えられなかったと認め、パス保有者には冬のステージを無償で提供しました。10月29日から11月26日までのログインで、全員に500鉄拳コインも配っています。

当時の鉄拳プロジェクトを率いていた原田勝弘氏も、一度は謝罪をXに投稿しました(後に削除されたと報じられています)。原田氏はその後SNKへ移っており、その経緯は新スタジオ設立の記事で書きました。

けん玉のひとこと

「ディスク内DLC」という言葉が出てきた頃は、素直に損をした気になっていました。いま振り返ると、引っかかっていたのは金額ではなく、手元にあるのに触れないという状態のほうなんですよね。

パッケージに全部入っているのが当たり前だった時代の感覚、と言われればそれまでのこと。ただ、あのときの拒否反応があったから、ファイトマネーのような「遊べば届く」仕組みが出てきたはずです。

いまのシーズンパス制は、よくできていると思います。何人来るか先に分かるので、買う側も大会に出る側も予定を組めるところ。14年前と比べれば、ずいぶん誠実な売り方になりました。

だから『鉄拳8』のつまずきは、値段の話ではないと見ています。パスを買った人が「これで全部」と受け取る線を、越えてしまったこと。パスに何が入って何が入らないかを、買う前に一行で示してほしいところ。それだけで防げる揉めごとは、まだ多いはずです。

次に誰が来るかを予想しながら待つ時間は、やっぱり楽しいんですよね。今年のパスがどう埋まっていくか、一緒に見ていきたいところです。

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