ファミコンのコントローラーで、上上下下左右左右BA。この並びを指がまだ覚えている人は多いはずです。
コナミコマンドはテストプレイ用の裏口だった。隠しコマンド文化が薄れるまでの40年

いわゆるコナミコマンドです。ところが、これを作った本人の理由は、遊ぶ人を楽しませるためではありませんでした。
1986年、ファミコン版『グラディウス』に入っていた
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 作品 | グラディウス(ファミリーコンピュータ版) |
| 発売 | 1986年 |
| 機種 | ファミリーコンピュータ |
| 発売元 | コナミ |
| ジャンル | シューティング |
| アーケードでの稼働 | 1985年 |
| コマンド | 上上下下左右左右BA |
| 効果 | 自機がフル装備になる |
元になったアーケードの『グラディウス』は1985年に稼働しました。自機のビックバイパーを操り、カプセルを集めて装備を強化していくシューティングです。
ファミコンへの移植で、このコマンドが足されました。入力すると集める手間を飛ばして、装備が一気にそろいます。
移植担当が、自分がクリアできないから入れた
コマンドを仕込んだのは、移植を担当した橋本和久さんです。狙いは、遊ぶ人へのサービスではありませんでした。
本人の説明は、拍子抜けするほど素直です。
自分はそれほど遊んでいなくて、当然クリアもできなかったので、コナミコマンドを入れました
テストのためには、最後まで進める必要があります。けれど、腕は足りません。だから自分用の抜け道を作った、という順番です。
覚えやすさについても理由を語っています。使うのは自分なのだから、忘れない並びにしたと話しています。
左右の往復とBAは、コントローラーを持ったまま反射で押せます。開発中に何百回も入力する人が選んだ並び、と考えると納得がいきます。
結果として、開発者が自分のために作った抜け道が、製品に残ったまま遊ぶ側の手に渡りました。
同じ入力で、効果が変わった
コナミは同じ並びを別の作品にも入れていきます。よく知られているのが、1988年のファミコン版『魂斗羅』です。
入力は上上下下左右左右BAで変わりませんが、起きることが違います。フル装備ではなく、残機が30に増えます。
2人で並んで、何度も死にながら進められる本数です。この作品の人気が高かった北米では「コントラコード」という呼び名も使われました。
同じ入力が作品をまたいで通じる、という状態が生まれました。ここでようやく「コナミの合図」として一人歩きを始めます。
1990年代、隠しコマンドは当たり前になった
メガドライブ版『モータルコンバット』では、「コード・オブ・オナー」の画面でABACABBと入力します。抑えられていた血の表現が戻る仕掛けです。
初代『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』には、デバッグモードが残っていました。タイトル画面で↑C↓C←C→Cと入れ、スタート画面でAを押しながら始めると起動します。
名前のとおり開発用の機能です。オブジェクトを置いたり、無敵で動かしたりできます。
PCでは『DOOM』のIDDQDとIDKFAが有名です。前者で無敵になり、後者で全武器・全弾・全鍵がそろいます。
頭のIDは開発元のid Softwareにちなんだものです。作った側が自分の名前を忍ばせた点は、コナミコマンドと同じ手触りがあります。
コマンドに頼らない道も用意されました。1990年に出たGame Genieは、本体とカートリッジの間に挟む機器です。
コードを打ち込むと、ゲームのデータを一時的に書き換えられます。任天堂はこれを作ったGaloobを訴えましたが、敗れました。販売は合法と認められています。
裁判まで起きた事実が、当時の熱量を示しています。データをいじって遊ぶことは、おまけではなくひとつの市場でした。
隠れた達成が、見える数字になった
変わり目は2005年です。11月22日に北米で発売されたXbox 360が、実績(アチーブメント)を本体の機能として持ち込みました。
1作品あたり1,000点という枠が用意され、Xbox Live Arcadeの作品は200点とされました。何を達成したかが、点数と一覧で外から見える形になります。
ソニーが追ったのは2008年です。6月17日にファームウェア2.40でのトロフィー導入が発表され、7月2日に提供が始まりました。
直後に不具合で取り下げられ、7月8日の2.41で出し直されています。立ち上がりはつまずきましたが、以後は標準の仕組みになりました。
この2つが隠しコマンドの立場を変えた、と見ています。それまで「知っている人だけが得をする」場所だったものが、「全員に見える達成」に置き換わりました。
もうひとつ大きいのは、オンラインでつながる作品が増えたことです。対戦や順位表がある場所では、特定の人だけ無敵になるのは成り立ちにくくなります。
発売後に修正を配れるようになったのも効いているはずです。開発用の抜け道を製品に残しておく必要が、以前より薄くなりました。
実績とトロフィーの考え方の違いは、Xboxの「ミシック実績」が実績コンプリートを称えるに書いています。
消えたのではなく、場所が変わった
コナミコマンドそのものは、今も使われています。『BioShock Infinite』や『Metal Gear Rising』に、同じ入力が仕込まれています。
ゲームの外にも広がりました。NetflixやDiscordのような、ゲームと関係のないサイトのイースターエッグとして使われています。
40年前にテスト用として作られた並びが、業界の合図を越えてWebの挨拶になったことになります。隠しコマンド文化の本体は、こちら側に移ったのかもしれません。
ファミコン版を今から遊ぶなら
ややこしいのは、復刻を買えばコマンドが試せるとは限らない点です。あの並びが通じるのはファミコン版で、アーケードの『グラディウス』には入っていません。
2025年8月7日に出た『グラディウス オリジン コレクション』は、アーケードの内容を軸にしたまとめです。日本ROM、バブルシステム、北米、欧州など7本18種類が入りますが、ファミコン版はありません。
ファミコン版『グラディウス』は、ファミリーコンピュータ Nintendo Switch Online で配信中です。Switch Onlineに加入していれば、任天堂の配信ページから追加の支払いなしで遊べます。
ファミコン版『魂斗羅』の受け皿は『魂斗羅 アニバーサリーコレクション』です。2019年6月12日に出たソフトで、Switch・PS4・Xbox One・Steamで配信中です。
中身は10本で、目当てのファミコン版『魂斗羅』(1988年)も入っています。北米のNES向け『CONTRA』や、スーパーファミコンの『魂斗羅スピリッツ』まで並びます。
Steamでの価格は3,300円です。2026年10月5日の時点では60%引きの1,320円になっていました(ストアページ)。
残機30を自分の指で確かめるなら、こちらがいちばん手堅い道です。
けん玉のひとこと
この話でいちばん好きなのは、理由が「自分がクリアできなかったから」というところ。立派な狙いがあって生まれたものではなかったんですよね。
開発者が自分のために作った抜け道が、製品に残り、遊ぶ側に見つかって、40年後に合図として通じています。設計された文化ではなく、こぼれたものが育った形です。
実績やトロフィーが悪いとは思いません。やり込んだ分が記録に残るのはうれしいし、何がまだ残っているか分かるのは親切です。
ただ、点数にならない秘密がなくなったのは、少し寂しいところ。誰にも共有されないまま、自分の手元だけで起きるご褒美でした。
コマンドを入れて装備がそろう画面は、今でもずるいくらい気持ちがいいです。クリアできない人を助けるために作られたものなので、後ろめたさも一緒に付いてくるんですよね。
Switch Onlineなら、その画面にすぐ戻れます。指があの並びを覚えているかどうか、一度試してみてほしいところです。
※ オンライン化とパッチ配信が開発に与えた影響は一次情報を確認しきれていないため、誤りがあればお問い合わせからお知らせください。
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