この連載の1本目は、小島秀夫さんが監督として初めて名前を出した作品から始めます。1987年に MSX2 で出た『メタルギア』です。
【連載 第1回】メタルギア(MSX2・1987年)、撃ち合えないハードから生まれた隠れて進む遊び

この作品は、敵を撃ち倒して進むゲームとして企画が動き出しました。それが隠れて進むゲームに変わった理由は、当時のハードの都合でした。
1987年7月13日、MSX2 で世に出た
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 作品 | メタルギア |
| 発売日 | 1987年7月13日 |
| 機種 | MSX2 |
| 発売元 | コナミ |
| 開発 | コナミ開発3課 |
| ゲームデザイン・監督 | 小島秀夫 |
| ジャンル | アクションアドベンチャー |
主人公のソリッド・スネークが単独で敵地に入り、施設の奥へ進んでいきます。目の前の敵を片づけて道を開くのではなく、見つからないように抜けていく作りです。
ファミコンを希望して、MSX部門に配属された
小島さんがコナミに入ったのは1986年です。配属されたのは神戸のオフィスで、担当は MSX 向けのソフトでした。
本人が作りたかったのはファミコンのソフトだったといいます。希望とは違う機種の部署から、仕事が始まったことになります。
『メタルギア』も、自分で立てた企画ではありませんでした。会社から戦争ゲームを作るよう求められて、そこから始まっています。
敵と弾を並べられないから、撃たせるのをやめた
求められていたのは、敵を撃ちながら進むアクションでした。ところが MSX2 では、敵や弾を画面に多く出せません。
同時に表示できる数に厳しい制限があり、撃ち合いの密度を上げようとしても頭打ちになります。戦争ものとして成り立たない、という壁です。
ここで小島さんが選んだのは、敵の数を増やすのをあきらめる方向でした。敵をほとんど出さず、見つからないように敵地へ入っていく作りに切り替えます。
この判断は、遊ぶ側の動き方をまるごと変えました。敵の正面に出るのが失敗で、壁ぎわを回り、視界の外を通るのが正解になります。
見つかったあとに撃ち合って解決できないぶん、隠れ場所を探して逃げ切る時間が生まれます。緊張がいちばん高いのは戦っている最中ではなく、やり過ごしている最中です。
できないことに合わせて削った結果、遊びの中心そのものが入れ替わったわけです。
同じ題名で、中身の違うファミコン版が出た
1987年12月には、ファミコン向けの『メタルギア』も出ています。手がけたのはコナミの別の部門で、MSX2版をもとに作り直したものです。
小島さんはこの開発に関わっていません。後年になって、自分の作品ではないとはっきり切り離しています。
ややこしいのは、海外での順番です。MSX2 は北米では発売されませんでした。そのため北米で最初に出た『メタルギア』は1988年6月の NES版で、欧州で出たのは1989年です。
つまり海外の多くの人が先に触れたのは、小島さんが関わっていない方の『メタルギア』だったことになります。同じ題名でも、別のものとして扱う必要があります。
MSX2 が北米に来なかったぶん、小島さんが作った方が当時届いた範囲は限られていました。この作品そのものが広く知られるようになるのは、あとの話です。
呼び名がつく前に、遊びの形だけができていた
『メタルギア』は、ステルス要素を本格的に取り入れた最初のゲームです。その功績で、ギネス世界記録の「GAMER’S EDITION 2008」に認定されています。
ただし「ステルスゲーム」という呼び名は、あとから整理されたものです。1987年の時点で、そのジャンル名があったわけではありません。
名前がつくより先に、遊びの形だけができていたことになります。同じ作りを選ぶ作品が続いて、呼び名が後から追いついた順番です。
いま遊べるのは「マスターコレクション Vol.1」
MSX2 では1990年7月20日に、続編の『メタルギア2 ソリッドスネーク』も出ました。コナミが MSX 向けに出した最後のソフトで、この2本は今もまとめて買えます。
受け皿になっているのが『METAL GEAR SOLID: MASTER COLLECTION Vol.1』です。2023年10月24日に出たソフトで、いまも各ストアで買えます。
対応機種は Switch、PS5、PS4、Xbox Series X|S、そして PC です。価格は2,750円で、2026年9月27日の時点でも同じ額でした。
中身は MSX2版の『メタルギア』と『メタルギア2 ソリッドスネーク』が主軸です。そこに『メタルギアソリッド』と、MGS2・MGS3 の高解像度化されたものが加わります。
おまけの扱いで入っているものもおもしろいところです。小島さんが関わっていないファミコン/NES向けの『メタルギア』も収録されています。海外で出た続編『SNAKE’S REVENGE』も同じです。
1987年の作品を単体で探し回らずに済むのは、素直にありがたいです。同じ題名の別物を並べて見比べられるのも、このまとめ方の得なところです。
けん玉のひとこと
できないことに合わせて設計を変えた、という話が好きなんですよね。撃てないなら撃たせない。言葉にすると単純ですが、上から求められた企画でそこまで振り切るのは簡単ではないはず。
しかも、削った先に残ったものが後の標準になりました。ハードの制限はとうに消えたのに、隠れて進む面白さだけが生き延びたところ。都合から生まれたものが、都合がなくなっても価値を持ち続けた例です。
小島さんがコナミを離れたあとに何を作っているかは、『PHYSINT』の資金打ち切りはZoomで告げられたに書きました。この連載では、そこまでを1本ずつたどっていきます。次に追うのは1988年の『スナッチャー』です。
40年近く前の作りなので、いまの作品のような親切さはありません。それでも、見つからずに次の部屋へ抜けたときの手ごたえは古びていないはず。マスターコレクションで一度、あの緊張を確かめてみてほしいところです。
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