ゲーム探訪連載「ハード末期に現れた、限界を超えた画面」

【連載 第1回】メタルスレイダーグローリー、ファミコン最大の8メガビットで描いたアニメ絵

メタルスレイダーグローリー、ファミコン最大の8メガビットで描いたアニメ絵

ゲーム機には、出てから何年もたって「この機械でここまで出せたのか」と驚かされる作品が現れます。それもたいてい、次の機種が見えてきた頃です。

この連載では、そうしたハード末期の作品を1本ずつたどります。何を足し、何を工夫して、配られた性能の先にある画面を出したのか。1回目はファミコンの『メタルスレイダーグローリー』です。

作品の概要

項目 内容
発売日 1991年8月30日
機種 ファミリーコンピュータ
発売元 HAL研究所
ジャンル コマンド選択式のSFアドベンチャー
ROM容量 8メガビット(1メガバイト)
企画・キャラクターデザイン・ストーリー ☆よしみる

舞台は、宇宙戦争が終わって8年がたった地球圏です。主人公の日向忠が手に入れた作業用の機体が、実は軍用の「グローリー」だったところから話が動きます。

スーパーファミコンが出たあとのファミコン

ファミコンは1983年、同時発売の3本がすべてアーケード移植という顔ぶれで始まりました。それから8年後の1991年8月に出たのが本作です。

スーパーファミコンは、その9か月前の1990年11月21日に発売されていました。店の主役は、すでに新しい機種へ移りつつあった時期です。

そこへHAL研究所が出したのが、開発に4年2か月をかけたとされるアドベンチャーでした。半年や1年で発売にこぎつけるソフトも多かった時代です。

着手した頃のファミコンは、まだ現役の真ん中にいました。仕上がったときには、次の世代が始まっていたことになります。

ROM は8メガビット、つまり1メガバイトです。ファミコン用のソフトとしては最大の容量でした。

大きな器に何を詰めたか

カセットに入っているのは、任天堂が設計したメモリ管理チップ「MMC5」です。大きな ROM を扱えるようにするほか、描画を助ける機能も持っていました。

ただ、MMC5 は本作のために作られた専用のチップではありません。1990年2月から使われ始め、光栄のシミュレーションゲームなどにも載った部品です。

同じ部品を使ったソフトはほかにもあります。本作が違ったのは、広げた容量の使い道です。本作は、それをキャラクターの顔に注ぎ込みました。

話している人物は、台詞に合わせて口を動かします。まばたきもしますし、台詞によっては表情そのものが変わります。ヒロインの顔だけで、48種類の絵が用意されていました。

ファミコンには、横一列に並べられる絵の部品の数に上限があります。超えると一部が消えて、画面がちらつきます。

本作は部品の並び方をずらして、ちらつきを避けながら動きを付けました。容量を足しただけでは、アニメのような顔は動きません。並べ方まで手で詰めていく作業があって、あの画面になっています。

1万2千本で終わった生産

これだけ手をかけた作品ですが、出回った数は多くありません。生産は初回の1万2千本だけでした。

店に出た分の売れ行きは好調だったとされます。ただ、MMC5 を載せたカセットは作り直すと費用がかさむため、追加の生産はしない方針が最初から決まっていました。

のちに中古市場ではプレミア価格が付き、手に入れにくいソフトの代表格になっていきます。開発費も大きく膨らみ、『星のカービィ』の生みの親である桜井政博さんは、巨額の費用がかかった作品として振り返っています。

ハードの終わりに限界作が出る理由

本作の経緯から、末期の作品に有利な条件がふたつ見えてきます。ひとつは部品の幅です。MMC5 が使われ始めたのは1990年で、ファミコンが出た1983年にはなかった選択肢でした。

もうひとつは作り手の慣れです。ちらつきを並び方で避けるような工夫は、そのハードの癖を知り尽くしていないと出てきません。どちらも、ハードが出てから年月がたたないと手に入らないものです。

本作にはこれに加えて、4年ほどとされる異例の開発期間がありました。全盛期に着手した作品が、次の世代が始まった頃に仕上がったことになります。

今遊ぶ方法

いま新しく手に入れる方法は、ファミコン版のカセットを中古で探すことだけです。Nintendo Switch Online のファミコンとスーパーファミコンのラインナップにも、今のところ見当たりません。

これまでの復刻は、どれも販売を終えています。ファミコン版は、Wii のバーチャルコンソールで2007年12月18日に配信されました。Wii のショッピングチャンネルは、2019年1月31日に販売を終えています。

Wii U でも2015年7月1日にファミコン版が配信されました。『メタルスレイダーグローリー ディレクターズカット』は、2000年にスーパーファミコン向けに作り直された作品です。こちらも2015年12月9日に Wii U で配信されました。

ディレクターズカットは、グラフィックを描き直し、BGM を一新した内容です。容量の都合で削られていた戦闘時のパートナー選択が戻り、幻だった場面も加わりました。

当時はローソンでの予約販売と、ニンテンドウパワーでの書き換えで売られました。その書き換えサービスは2007年に、Wii U のニンテンドーeショップは2023年3月に販売を終えています。

けん玉のひとこと

性能表を眺めても、この画面は説明しきれないんですよね。違いを生んだのは、広げた容量を口パクとまばたきにまで回すという判断のほう。

アドベンチャーで顔を動かしても、物語の筋は変わりません。それでも話し相手がまばたきをすると、画面の向こうに人がいる感じがぐっと強くなるはずです。手間のかかるところに、あえて手間をかけた作品だと思います。

出回ったのは1万2千本だけ。それでも30年以上たった今、「ファミコンの限界」の話になると名前が挙がります。その手間が、画面にちゃんと残っているからなんですよね。

惜しいのは、いま公式に遊べる場所が見つからないところ。Nintendo Switch Online に入ってくれたら、あの顔の動きを確かめられる人はずっと増えるはずです。

部品の幅と、作り手の慣れ。末期にはこの2つがそろいやすいはず。この見立てが当たっているかは、ほかの機種の末期の作品でも同じ2つが見つかるかで確かめられます。自分が持っていた機種の「末期の1本」を思い浮かべながら、読んでもらえたらうれしいです。

※ Nintendo Switch Online での提供状況と開発期間は一次情報を確認しきれていないため、誤りがあればお問い合わせからお知らせください。

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メタルスレイダーグローリー ファミコン

1991年のファミコン版。生産は初回の1万2千本だけで、手に入るのは中古のみ

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