第1回で取り上げた『メタルギア』の翌年、小島秀夫さんはまるで違う遊びを出しました。1988年の『スナッチャー』です。撃つことも隠れることもほとんどなく、文章と絵を読み進めるアドベンチャーでした。
【連載 第2回】スナッチャー(1988年)、小島秀夫さんが文章と絵で読ませたサイバーパンク

舞台は近未来の神戸で、人間になりすますアンドロイドを捜査官が追う話です。アクションの次に、物語そのものを前に出した一本になります。
1988年、PC-8801 と MSX2 で出た
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 作品 | スナッチャー(SNATCHER) |
| 発売日 | PC-8801mkIISR:1988年11月26日/MSX2:1988年12月13日 |
| 発売元・開発 | コナミ |
| ジャンル | コマンド選択式アドベンチャー |
| 企画・脚本・ディレクター | 小島秀夫 |
| 音楽 | 碇子正広 |
| 当時の価格 | PC-8801mkIISR:8,800円/MSX2:9,800円 |
企画はもともと PC-8801 向けに立てられ、会社の求めで MSX2 にも移すことになりました。MSX2 向けは SCC 音源のカートリッジが付き、1,000円高い9,800円でした。
MSX2 向けはフロッピー3枚の構成です。音楽は PC-8801 が FM 音源、MSX2 が SCC で鳴らしていて、機種ごとに音源から違っていました。
2042年のネオ・コウベ・シティ
舞台は2042年のネオ・コウベ・シティです。人間を殺してその人になりすますアンドロイド「スナッチャー」が、街に紛れ込んでいます。
主人公のギリアン・シードは、スナッチャーを追う捜査官「ジャンカー」です。相棒はナビゲーターロボットのメタル・ギア Mk-II。前の年の作品に出てきた兵器と同じ名前が、ここでは小さな相棒に付いています。
小島さんは、この作品が『ブレードランナー』の影響を受けていると認めています。人間と見分けのつかない人造人間を、未来の都市で捜査官が追い詰めていく。サイバーパンクと呼ばれる題材を、アドベンチャーで読ませる作りです。
選んで、読んで、ときどき撃つ
遊び方はコマンド選択式です。「移動」「見る」「調べる」「聞く」などを選び、場面の絵と文章を読み進めます。絵の多くは止め絵で、要所だけに動きが付きます。
ところどころに射撃の場面も入りますが、中心はあくまで読むことです。誰に何を聞くか、どこを調べるかで話が進み、事件の輪郭が少しずつ見えてきます。
前作では、見つからずに抜けることが遊びの中心でした。今作では、会話と調べものの積み重ねが中心です。発売は1年あまりしか離れていないのに、手ざわりがまるで違います。
全5章の物語が、2章で終わった
この作品には大きな欠けがありました。物語は全5章で構想されていましたが、出たのは ACT1 と ACT2 だけです。
開発は長引き、PC 向けだけで1年半ほどかかっていました。会社からは半分に分けるよう求められ、ディスクの容量の都合も重なって、後半は大きく削られます。
話が大きく動いたところで幕が下りるので、遊んだ人は続きを待たされました。PC-8801 と MSX2 での売れ行きも、振るわなかったとされます。
アドベンチャーの続きは、PCエンジンで形になった
1990年4月27日には、MSX2 で『SDスナッチャー』が出ています。こちらは RPG に作り替えたもので、のちの ACT3 の土台になる話が加わりました。
アドベンチャーのまま続きが形になったのは、その2年後です。1992年10月23日にPCエンジン SUPER CD-ROM2 で『SNATCHER CD-ROMantic』が出ました。
ACT3 が加わり、声と CD の音で場面を聞かせる作りになっています。ファミ通のクロスレビューでは40点満点中33点を取り、ゴールド殿堂に入りました。
売れ行きについては、小島さん自身が約10万本だったと語っています。SUPER CD-ROM2 のソフトでは、『天外魔境II 卍MARU』に次ぐ2番目だったそうです。PC では届かなかった人に、ようやく届いた形です。
1994年には海外向けにメガCD で出ましたが、日本では発売されていません。
1996年にはプレイステーションとセガサターンにも移りましたが、この3つの移植に小島さんは関わっていません。小島さんの手による『スナッチャー』は、PCエンジン版までです。
後のメタルギアに残った名前
『スナッチャー』の名残は、その後のメタルギアにも顔を出します。『メタルギア ソリッド4』には、小型のメタル・ギア Mk-II が登場します。
『メタルギア ソリッド V グラウンド・ゼロズ』には、特別任務「ジャメヴ・ミッション」があります。雷電がスナッチャーを倒す内容で、当初は Xbox 向けだけに用意されていました。
いま触れられるのは PCエンジン mini
いま『スナッチャー』を遊ぶなら、2020年3月19日に出た「PCエンジン mini」です。コナミの日本版の収録一覧に載っていて、入っているのは1992年の PCエンジン版です。ACT3 まで進めます。
PCエンジン mini は、収録作を内蔵してテレビにつなぐ小型の本体です。日本版の希望小売価格は10,500円(税抜)でした。発売から6年たつので、買うときは販売ページで在庫と価格を確かめてください。
一方で、PC-8801 や MSX2 で出た元の作品は、いまの機器で買える公式の配信が見当たりません。1988年の姿に触れる手段は、いまのところ限られています。
けん玉のひとこと
スナッチャーは、この連載でいちばん書きたかった作品のひとつなんですよね。撃たせない『メタルギア』の翌年に、今度は撃つことすら脇に置いて、文章と絵で読ませに来た。その振り幅が、小島さんらしいところ。
全5章のうち2章で出すしかなかったのは、作り手としては悔しかったはず。それでも続きを待つ人が残り、4年後にPCエンジンで ACT3 まで届きました。
後のメタルギアにまで名前が顔を出すあたり、小島さんの中でも終わっていなかった作品なんでしょうね。
次回は1994年の『ポリスノーツ』を追います。PCエンジン mini が手元にあるなら、ギリアンとメタル・ギアの掛け合いを声つきで味わえます。ネオ・コウベ・シティを歩いてみるのも、楽しいはずです。
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