ゲームセンターの入り口で、歌が聞こえてくる時期がありました。1994年の春からの数年、その出どころをたどると、たいてい赤いストックカーの筐体に行き当たりました。
【連載 第2回】デイトナUSA が1994年のゲームセンターに置いたもの。移植の道筋と今遊べる場所

『デイトナUSA』は、セガの MODEL2 で動いた最初の作品です。基板そのものの話はセガ MODEL2 とは何だったのかに書いたので、今回は作品の側から見ていきます。
3本のコースと、2人掛けの筐体
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 稼働 | 1994年3月(日本)、4月(世界) |
| 開発 | セガAM2研 |
| ジャンル | レーシング |
| 基板 | MODEL2(第1弾) |
| コース | 3本(初級・中級・上級) |
| 筐体 | 2人掛け型と、座席にサブウーファーを入れた上位型 |
| 音楽 | 光吉猛修 |
稼働は1994年3月に日本、4月に世界へと伝えられています。開発はセガAM2研で、プロデューサーは鈴木裕さん、ディレクターは名越稔洋さんだったとされます。
筐体は2台を並べた2人掛け型と、座席にサブウーファーを入れた上位型が用意されました。何台もつないで同時に走れる作りなので、店舗によっては横に長く並べて置かれていました。
オーバルから恐竜の谷、そして海辺の街へ
初級の Three Seven Speedway は、楕円のオーバルコースです。ローリングスタートを再現していて、走り出した時点で隊列がもう動いています。
中級の Dinosaur Canyon は、岩山のあいだを抜けるコースです。上級の Seaside Street Galaxy は海辺の市街地を走ります。3本しかないのに、作りの方向はそれぞれ違いました。
初級で安心させて、上級で突き放す。本数を増やすのではなく、1本ごとの性格を立てて遊びを分けた作りです。覚えられる量に収まっているので、通う人は3本とも手の内に入れられました。
ストックカーは滑らないのに、滑らせた
実車のストックカーは、オーバルを滑らせながら走るものではありません。それでも『デイトナUSA』は、ハンドルを切ってドリフトさせる操作を入れました。
シミュレーションに寄せない方針があったと説明されています。再現より手ざわりを選んだわけです。
この判断が、結果として作品の寿命を長くしました。車の動きが最初から現実と違うので、年が経っても「古い再現」になりません。ハンドルを切った瞬間の感触そのものが遊びの中身だからです。
歌の入ったBGMも、同じ性格のものだと思います。作曲は光吉猛修さん。レースゲームの曲として正しいかどうかより、耳に残るかどうかで作られています。
イギリスのチャートを6か月続けて取った
当時の売れ方は、業務用のチャートに残っています。イギリスでは1994年の5月から10月まで、6か月続けて1位だったとされます。
日本では1994年の業務用売上で9位だったとされます。北米では業界誌 RePlay のチャートに5年にわたって顔を出しました。そのうち16か月は1位で過ごしたと伝えられています。
1994年の11月にはセガサターン、12月には初代プレイステーションが発売されました。家庭用が3Dに移り始めたその年に、ゲームセンターの側でもこれだけ人が動いていたことになります。
「デイトナ」と名乗れない時期があった
家庭用への移植は、1995年4月のセガサターン版から始まりました。1996年にはWindows版、2000年12月21日にはドリームキャストの『デイトナUSA 2001』が出ます。
2001はコースが8本に増え、最大4人のオンライン対戦とゴーストデータのやり取りに対応しました。コースごとにミラーや逆走といった変化も付いています。
ところが2010年、セガがこの作品を業務用で作り直したとき、題名は『セガ レーシング クラシック』になっていました。中身はデイトナなのに、デイトナと名乗れていません。
「デイトナ」の名前をめぐる事情があったとされますが、経緯の説明は資料によって食い違います。はっきりしているのは、2017年に『デイトナ チャンピオンシップ USA』が出て、名前が戻ったことです。
なお「SEGA RACING CLASSIC 2」という名前が『龍が如く』シリーズのゲームセンターに入っています。こちらは続編にあたる別の作品です。MODEL3 の側の話なので、この連載の後ろの回で扱います。
正規に買える窓は2027年7月で閉じる
いま正規に買えるのは、2011年10月26日に配信された PS3 版と Xbox 360 版です。画面をHD化しつつアーケード版の中身をそのまま運び、最大8人のオンライン対戦に対応しました。
家庭用だけの要素も入っています。ワールドランキング付きのタイムアタック、チャレンジモード、そして歌を歌うカラオケモードです。価格は PS3 版が900円、Xbox 360 版が800マイクロソフトポイントでした。
Xbox 360 版は2023年2月7日で配信を終えています。すでに買った人は、Xbox One 以降の後方互換で遊べます。
PS3 版は、セガ アーカイブスからストアへたどれる形でまだ残っています。ただし、こちらにも期限ができました。
ソニーは2026年7月1日、PS3 と PS Vita 向け PlayStation Store の終了を告知しました。
メキシコなど一部の地域は2026年8月から、それ以外は2027年7月で販売を終えます。購入済みのものは、その後も当面ダウンロードできるとしています。
つまり『デイトナUSA』を新しく買える窓は、2027年7月に閉じます。現行機への移植は、今のところ発表されていません。
けん玉のひとこと
この作品の強さは、3コースという少なさの裏にあると思っています。増やすのではなく、1本ごとの性格を立てた作り。遊ぶ側が覚えきれる量に収めたところが効いているんですよね。
ドリフトを選んだ判断も、いま見ると得をしています。実車に寄せなかったぶん、32年たっても画面の中の動きが古びません。再現を目指した作品のほうが先に年を取るのは、少し皮肉なところ。
気になるのは、新しく買える窓が2027年7月で閉じることです。歌もカラオケモードも含めて、そのまま運ばれた形がいったん途切れます。
現行機に出し直してもらえれば、当時ゲームセンターに通えなかった人にも、あの歌の出どころが届くはず。その日が来たら、まずは初級のオーバルから走ってみてほしいですね。
※ 稼働時期の月・開発体制・業務用チャートの順位・『デイトナ』の名前をめぐる事情は一次情報を確認しきれていないため、誤りがあればお問い合わせからお知らせください。
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