『Halo』と『Destiny』を立ち上げた Jason Jones 氏が、新しいスタジオを始めました。10月1日、ロサンゼルス発の発表です。
Stone Kite始動、Halo・Destinyの生みの親が最初に出すのはコミック

名前は Stone Kite。ただ、この会社から最初に世に出るものはゲームではありません。4話構成のコミックシリーズです。順番が入れ替わっています。
最初に出てくるのはゲームではない
Stone Kite が掲げた新しい世界の名前は『One Zero One』。人類と、AI で動くロボット兵士の軍との世界規模の衝突を描く物語だとされています。
4話のコミックとして始まり、新しい号は2027年の初めまで無料でオンラインに出ます。発表では、その先に別の媒体の企画が続くとも説明されています。
ゲームについては何も示されていません。タイトル、機種、時期、いずれも未発表です。
CEO はマーガレット・ストール氏。ニューヨーク・タイムズのベストセラー作家で、マーベル・コミックスでの執筆歴がある人です。Jones 氏は共同創業者として並びます。
出資したのは Griffin Gaming Partners と、共同創業者やエンジェル投資家。金額は公表されていません。
集まったのは、ゲーム以外の作り手
発表で名前が出ている人たちの経歴を並べると、この会社の重心が見えてきます。
スティーブン・ワッカー氏は現職のマーベル・コミックス編集長です。ジェニーン・シェイファー氏はマーベルと DC の両方を渡ってきた編集者。マット・ジョンソン氏は映画とテレビの脚本家・プロデューサーです。
ゲーム側は2人だけです。Jones 氏と、ルイス・ピーターソン氏。ピーターソン氏は 7 Studios の CEO や、Activision Blizzard の幹部を務めました。
ストール氏は発表の中でこう述べています。
ひとつの媒体から始めて外へ広げるのではなく、初日から異なる分野の最良の作り手を同じ部屋に集め、世界を一緒に形づくる。
— マーガレット・ストール氏(Stone Kite の発表、10月1日)
媒体ごとの仕切りを壊す、という宣言です。同社は Jones 氏の手がけた作品群について、推定150億ドルの生涯価値を生んだと説明しています。
2億5000万人を超えるプレイヤー・視聴者・読者に届いたともしています。会社側が創業メンバーの経歴として示した数字で、第三者が算出したものではありません。
「ゲームから広げる」には先例がある
ゲームの世界観を他の媒体へ広げる動き自体は、ここ数年で珍しくなくなりました。ソニーは2019年に PlayStation Productions を立ち上げています。
『アンチャーテッド』は映画に、『The Last of Us』はテレビシリーズになりました。
作り手の側から始めた例もあります。Rockstar Games 共同創業者のダン・ハウザー氏が立ち上げた Absurd Ventures です。映画・アニメ・ゲーム・書籍を横断する世界作りを掲げました。
こちらも、先に出たのは Dark Horse と組んだグラフィックノベル『American Caper』です。ゲームより紙が早い、という進み方の実例がすでにあります。
Stone Kite の「初めての形」という自称は、そう考えると言い過ぎに見えます。ただ、ゲームを1本も出さないうちにコミックから世界を出す点は、たしかにこれまでと順番が違います。
作る側が世界を持つということ
この会社の形は、Jones 氏の立場から見ると別の意味が出てきます。
Jones 氏は1991年、アレックス・セロピアン氏と Bungie を共同創業しました。『Marathon』ではコードとレベルデザインに関わりました。
『Halo: Combat Evolved』と『Halo 2』ではプロジェクトリードを務めています。2014年の『Destiny』ではディレクターでした。
Halo はいま、マイクロソフトのもとにあります。次の作品の開発は、Activision 傘下の新チームへ移りました。詳しい経緯はXboxが268人を削減、次の『Halo』はActivisionの新チームが開発へにまとめています。
Destiny の権利は、2022年に Bungie を買収したソニーの傘下にあります。Jones 氏自身は2021年時点で、Bungie の Chief Vision Officer でした。
2026年6月に発表された Bungie の人員削減で、この役職が対象に入ったと報じられています。ただ、本人名での公式発表は確認できていません。
35年かけて2つの大きな世界を作り、そのどちらも手元には残っていない。新しい会社を自分の名前で始め、最初の世界をコミックから出す理由は、このあたりにあるのだと思います。
ゲームを1本出すには、数百人と数年と、世に出してくれる会社が必要です。コミックなら、関わる人数も世界を公開するまでの距離もずっと短い。
先に世界を自分たちのものにしておけば、ゲームにする順番は後から選べます。
けん玉のひとこと
正直なところ、最初の発表がコミックと聞いて少しがっかりしました。Halo と Destiny を作った人の新作が遊べるのは、だいぶ先になりそうなところ。
ただ、この順番には理屈が通っているんですよね。ゲームから始まった世界を映像にするとき、設定の矛盾や作り直しが出てくるのはよくある話です。最初から全部の媒体を見ながら組めば、そこは減るはず。
気になるのは、世界を広く作ることと、1本のゲームが面白いことは別の技術だという点です。『Halo』が残ったのは物語の設定よりも、操作の手触りと対戦の設計が良かったからだと思っています。
いま名前が出ている6人のうち、その部分を担えるのは Jones 氏たち2人だけです。ここにゲーム側の作り手がどれだけ加わるかで、この会社がゲームを本気で作る気があるのかが見えてきます。
幸い、判断材料は無料で手に入ります。『One Zero One』の1話を読んで、世界そのものに引き込む力があるかを確かめたいですね。コミックで面白ければ、ゲームを待つ理由にもなるはずです。




